「幼い記憶に似た世界」真夏のオリオン ベレエさんの映画レビュー(感想・評価)
幼い記憶に似た世界
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正直な話、欠点はいくらでもある。そのほとんどが、実際に起こった戦争を題材にしていることに起因しているように思う。なので、本当はアニメもしくはSFのように、完全な架空の世界でのお話に向いてるのかもしれない。不可能可能は置いといて、それが作品にとって一番恵まれた形だったのではないか。リアリティが邪魔をして入って来られない人を、それこそ「もったいない」と思うくらい、話自体は心地よかった。
この映画のおもしろさは、少年漫画のおもしろさだ。どこをとっても清々しい。敵味方はあったとしても、そこにある感情は憎しみではない。心のねじ曲がった人物が出てくることはなく、主人公を筆頭に、誰もが気持ちのいい性格をしている。こんな世界はどこにもないかもしれない。けれど、あったとしたら。それがスクリーンに投影されている。だからこの映画は観ていて穏やかな心持ちになるのである。荒唐無稽な話かもしれないが、上映している二時間、そういう人物たちは存在している。それだけでいいのだ。それだけで充分、戻ってきた現実が違うものに見えた。
おそらくこの映画は、評論家にひどい言われようをすることと思う。たしかに、将来名作と呼ばれ愛され続けるかといえば、それは違うかもしれない。でも、ひとつだけ言えることは、多くの人がこの映画を観てひととき、穏やかな気持ちをそれぞれに持ち帰ったんじゃないかということだ。そして、間違いなく自分も、その一人である。
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