ディファイアンスのレビュー・感想・評価
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死を選ぶことも尊いと知った(それは生きることだから)
人間として、生きるための抵抗(ディファイアンス;Defiance )だった。
「ラスト サムライ」のエドワード・ズウィック監督が自ら脚本を手掛けたこの作品、ユダヤ人虐殺という闇の史実に埋もれたビエルスキ兄弟の真実を物語っている。
1941年第二次世界大戦の最中、ナチス・ドイツの猛攻がポーランドを襲った。
両親を殺されたトゥヴィア、ズシュ、アザエルのビエルスキ兄弟は、子供の頃から知りつくしたベラルーシの森に身を隠す。
そこには徐々に迫害から逃れたユダヤ人達が集まり、いつしか兄弟は彼らの身を左右する先導的役割を担うことになる。
兄弟の長男トゥヴィアは身を隠しつつ、両親を殺されたことへの復習心も隠し持っていた。
ある日それが暴発し直接行為に走る。
それで済む程の問題ではない。
ナチス軍そのものを相手にしてしまう事態に陥る。
果たしたはずの復讐など、単なる序章だった。
空しさに覆われた空気感と、木々の合間に見える灰色な空の閉鎖感が絶妙だ。
彼等はとにかく生きることにした。
決して安全とは言えず、途方に暮れてもいたが、いつまでも頭を垂れてはいなかった。
生きることを見失っていなかった。
それが唯一の救いだった。
やがてトゥヴィアはパルチザン(民間人が組織する非正規軍)として反対勢力に化すということではなく、一人でも多くのユダヤ人救出の為に尽力する組織を構想する。
現役007のダニエル・クレイグ;Daniel Wroughton Craigが、スタイリッシュさを他所に、苦悩しながら理想を求めて歩むリーダーに扮する。
極限状態に置かれた人々の指針となっていく様が描かれている。
ごく普通の男が、強大なナチスから人々を救出するために闘う姿が見ものだ。
憤りと悲しみから始まった闘争行為は、「生きる」ことを選んだ強さと優しさが根底にあった。
憎しみと復讐から始まった逃亡生活は、「共同体」という言葉を知り「生きる組織」を形成する手がかりとなった。
木材や薪の一つ一つから、男女、老人、若者といった生身の労働力まで・・・人々が公平に小さな国家を建国するかのように、希望に満ちたシーンが散りばめられている。
また、敵に見つかり空爆される中を逃げまどう混乱シーンもある。
アクション映画的な要素も含まれやや軽視しがちな錯覚に陥るが、そこはエンターテイメントとして理解しても良いだろう。
しかし「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」ほど悲愴的で重たい空気が無い分、人の生や性(さが)についてを細かく描写している。
この映画の良さはそこにある。
「シンドラー~」「戦場の~」で描かれたナチスは、冷酷非道そのものを嫌という程味あわせてくれた。
その後味の悪さが主人公たちの存在感を浮かび上がらせる効果だったが、「ディファイアンス」は別な切り口だ。
彼らが作り上げた「共同体そのもの」にも善悪があるようにスポットを当てている。
劣悪な気候や精神的な苛立ち、飢えや伝染病の蔓延、意見の食い違いによる決別、不平分子等、すべて仲間内から出始める。
そういった思わぬ困難とも向き合わざるを得ない悲しさの中に、本来の人間らしさがあった。
むしろナチスの強行は、遅々とした静かさだ・・・次第に追い詰めていく得体の無さだ。
これらの苦境について、3兄弟が各々の場面で決断し、打開策を見出していくストーリーは、どこか爽快な気持ちにもなる。
だから史実のリアリティに嘆いて感慨深くなる部分と、それとは別腹でスリリングな展開を追う部分と、両方を心得ながら鑑賞するといいだろう。
「人間らしく生きるための『死』を選ぶ」と劇中でトゥヴィアが語った台詞が脳裏に焼き付いている。
人間らしさを尊ぶため、人は逃亡し闘うこともあるのだという。
その上で納得のいく最期を迎えたいということだ。
生きることは、きれい事だけではない。
常に決断と責任の名に於いて、行くべき道を自ら選ぶこと。
どんな状況下に置かれてもだ。
話を元にしているとはいえ、驚きのサバイバルストーリー。ダニエル・クレイグの弱みを魅せる人間くささに惚れ込む1本!
第二次大戦下のポーランド・ソ連国境地帯で、最大1200人のユダヤ同胞を率いて、終戦までその命を守り抜いたビエルスキ兄弟の活躍を描いた物語。
ナチスの追撃にディファイアンスしながら、ベラルーシの森の中で何年も極寒と飢えも乗り越え、さすらいながらコミュニティを維持できたことは、実話を元にしているとはいえ、驚きでした。
映画には出てきませんでしたが、森の中のコミュニティは、病院や保育所まで機能していたようです。
森の中にキャンプと称する村を建設し、逞しくサバイバルの様子は、興味深いものがありました。
そしていつドイツ軍がやってくるかという緊迫感が、この作品の最大のバックボーン。 ただ中盤の越冬シーンは、キャンプのなかでのユダヤ人同士の食料を巡るいざこざが長めに描かれていて、ちょっと薄らいでしまいました。
それとゲットーの収容所に潜入して、収監されていたユダヤ人を全員救出するところでは、いともあっさり成功して、拍子抜け。
けれども終盤になって、ドイツ軍に追われだしてからは、ドキドキする展開で一気にラストに突入していったのです。
ダニエル・クレイグが演じるリーダーのトゥヴィアは、沈着冷静でありながら、随所に人としての優しさとか弱さを滲ませて、人間くささを色濃く表していました。
特に、コミュニティがドイツ軍に襲撃を受け、沼地に追い詰められたとき、溺死を覚悟で沼地に進むか、それとも徹底抗戦するか、まるで旧約聖書のモーゼと同様の究極の決断を迫られる場面となります。
このとき決断を迫られるトゥヴィアは、決断できずに悪寒に震え上がるのですね。1200人を束ねてきた貫禄のあるトゥヴィアも人の子であったということで、この心理描写を見事にダニエル・クレイグが演じきっていて、凄いなと思いました。エドワード・ズウィック監督ならではの心理描写が際立っていました。
一番感動したのはトゥヴィアとズシュの兄弟愛です。
感情的で好戦的なズシュは、ドイツ兵への復讐心でいきり立っています。それに比べて同胞への愛が深いトゥヴィアは、ドイツ兵を10人殺すことよりも1人の同胞を救うことを重視していました。たとえそれが病人や女子供など、ズシュから見たら足手まといな存在でも。
ある日、そんな二人の考え方の違いが爆発して、大げんかとなります。それがきっかけとなって、ズシュはキャンプを離れて、ソ連軍兵士なってしまいます。
しかし兄のピンチの時、軍から脱走してまで助けようとするところはやはり兄弟。仲違いした二人ががっしり抱き合うところはジンときましたね。
新米として青臭い007よりも、人間くささを感じさせるダニエル・クレイグを見てみたい人にお勧めの一本です
●ユダヤ人虐殺の背景
ユダヤ人は、ドイツ国内ではいつの事態でもマイノリティであり、差別されてきました。ヒトラーはこの偏見を最大限に活用、当時の大戦の敗北により失業率50%という経済危機の責任をユダヤ人に押しつけました。ナチスの台頭と共に、抑圧はより先鋭化していき、ヒトラーは14歳以上から教育の機会を奪う法律を定め、ユダヤ人が弁護士、医者、ジャーナリストとなることを違法としたのです。
だが、これは序の口にしか過ぎませんでした。
この作品でも描かれていますが、第二次大戦中のナチスのユダヤ人狩りによって、ヨーロッパに900万人いたユダヤ人の実に600万人が殺されてしまったのです。
いまイスラエルに対して国際的な非難が集中しています。しかし、彼らが念願のカナンの地を手に入れるまで、どれほどの苦難を2000年間味わってきたかと思うと、一概に責められない気持ちになりませんか。
『今でなければいつ』みたい
ユダヤ人パルチザンのお話というと、プリーモ・レーヴィの『今でなければいつ』をすぐ想起するが、細部が妙に似ていた。
すごくつまらないわけでもないが、同じベラルーシが舞台の戦争もので「炎628」と比較すると、何だかもの足りない。
ユダヤ人への迫害を行っていたのはドイツ人のみではなかったという点が浮き彫りになってくると、「僕の大事なコレクション」でもウクライナ系の人たちからの反発があり、実際にウクライナでのロケができなかったというから、この作品の撮影がベラルーシでできなかったのは(というか最初からそこでするつもりがなかったのかも)ある意味当然でしょう。というくらい、ベラルーシの人が観たらいい気はしないだろうという作りになっています。
少ない公開にディファイアンス。
この映画で描かれる、約1,200人のユダヤ人の生命を救った
ビエルスキ3兄弟の史実を私はまったく知らなかった。
さらに今作を観るまで彼らが単なる善人なのだと思っていた。
(いや、別に悪人ではないのだけれど^^;)
よくいう「盗人猛々しい」とはこのことか~。と改めて感じた。
転じて図々しいの意味ではなく、本来の強さ・勇敢さを指す。
あの逞しさあってこそユダヤ人を囲うことができたのだと思う。
付け加えて、D・クレイグはやはり007でなくても食べてゆける^^;
かえってこちらで演じた兄役の方が、私には色気を感じられた。
ユダヤ人狩りから逃れ、森へ逃げ込んだ3兄弟のところへ、
続々と同胞たちが集まってくる。自分らの面倒で手一杯ながら
彼らを見捨てることができない兄は、彼らの世話をかってでる。
とはいえ、常に追われる身であり、またドイツ軍への復讐に
燃える次兄はソ連軍に入隊、村人の密告や同胞同士の確執を
経て、なんとか森で生き延びようとする彼らだったが…。
圧巻はラストの森からの脱出。容赦なく浴びせられる砲弾、
いくらパルチザンとて、抵抗むなしくどんどん殺されていく。
もちろんそれまでにも撃ち合い・殺し合いは数えきれないが
この危機一髪状態をどうやって打破するんだ!?と思ったら
(そうなってほしいとの)願いが通じて意外なことが起こる…。
もちろんダニエルが突然「007になる」なんてことはない^^;
兄弟愛の素晴らしさもさることながら、
少し前に公開された「チェ」に被る部分が多く、辛さも倍増。
抵抗軍たちを纏め上げることの難しさ、リーダーとしての資質、
運命共同体とは清廉な響きに聞こえるが、そんな生易しいこと
ではなかったのだとさらに感じ入ってしまった。
兄が「もうここまで。」と諦めかけた時に「前へ進むんだ。」と
声をかける弟の成長ぶりには泣けた。あのJ・ベルが…と思うと
もう感無量。L・シュレイバーの演技も素晴らしく、言うことなし。
(これはもっと全国公開すべき作品。ディファイアンスするぞっ!)
ダニエル・クレイグの男気が炸裂
ナチス・ドイツに追われたポーランドに住むユダヤ人が
ピエルスキ兄弟の指導のもと、
ベラルーシの森で人間らしく共同生活を送り、
終戦の時には1200人もの人々が共同で暮らしていた
という史実に基づいたお話。
この生活は1941年から始まったのですが、
最初の冬越えが一番大変だったのでしょう、
食糧は直ぐに底をつき、盗賊のように近隣の農村から略奪し、
寒さをしのぐすべも限られ、
反抗者が現れるという始末。
直ぐにクレイグ演じるピエルスキ兄に頼るばかり。
それに応えようとするクレイグの
ストイックな姿がカッコ良く胸を打つのです。
最初うち彼に懐疑的だった元教師が死にぎわに
「神は我々に君を与えて下さった」と言った時、
彼の気持ちも報われ、
観ていた私も、とても嬉しくなりました。
この作品は口コミでヒットしてほしい作品です。
見応え充分!!
「ブラッド・ダイヤモンド」もかなりの傑作でしたが、エドワード・ズウィックの最新作も題材も深いものがあり、静かな感動あり、決して説教臭くならず、笑いの要素もあり、かと思えば人間のダークな部分も描き、尊厳も描き、見ごたえのある傑作でした。
また脇役までキャストも素晴らしく、素晴らしい演技でした。リーブ・シュレイバーがよかったですね。
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