劇場公開日 2009年2月28日

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「楽しかったが、深さを交錯させて欲しかった。」オーストラリア jack0001さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0楽しかったが、深さを交錯させて欲しかった。

2009年2月20日

楽しい

単純

果てしなく続く赤い大地と乾いた空気、前人未到の大陸・・・というイメージのオーストラリア;Australia。
この国にスポットが当たり注目されるようになったのは、ここ20年位の間だろうか?
だが、元々は略奪された悲しい土地である。
1788年からアメリカに代わり流刑植民地としてイギリス人が移民として入植してきた。
いわゆる島流しの地だ。
やがて1828年になると全土がイギリス植民地となり開拓されていった。
その際、先住民のアボリジニから土地を取り上げたり殺害したりという歴史がある。

この映画「オーストラリア」は、そんな史実とは別解釈で楽しめる内容。
痛快娯楽劇とでも言える健全さだ。
太平洋戦争を背景にした冒険ありラヴロマンスあり、おまけに雰囲気は西部劇仕立て。
往年のハリウッド映画を再構成したかのようで、年齢問わずに安心して観れる。

主演のニコール・キッドマン;Nicole Mary Kidmanを筆頭に、ヒュー・ジャックマン;Hugh Michael Jackmanや監督のバズ・ラーマンも含めたキャストやスタッフ関係者は、殆どオージー(オーストラリア人)による構成だ。
なので当人達は、まったく違和感なくオージーらしさを前面に出せたのだと思う(その割には、オージー訛りの英語ではなかったが)
太陽に当たり、夜は焚き火を囲み、静かに祈り、物事を受け入れていく。
勧善懲悪という言葉を正攻法で受け止め、素直に採用している。
ヒネリも仕掛けもないピュアなストーリーが、のびのびとした雰囲気を引き立たせたと思う。
妙に和ませてくれる。

その為か?少し問題意識の薄弱さが気にかかる。
時折登場するアボリジニ;Aborigineの存在は、必要以上なミステリアスさを醸しだしている。
というより、主人公たちを擁護するシンボル的な存在ではある。
それは劇中にて重要な意味もあるのだが、どうもその表現の仕方は少し誇張され気味だったようだ。
まるで魔法の国からの使途のような・・・彼らだって人間なのだ。
むしろアボリジニ達の文化や背景については、もう少し噛み砕いてシーンに投影させて欲しかった。
決して昔の西部劇のような「インディアン=悪」といった原住民差別を扇動することはないが、何か物足りない。
五万年以上も前からこの地に上陸した種族なのだから、ストーリーに色彩を出す意味で、先住民族の生活感も交錯する仕掛けや教養さは配慮をすべきだった。
人種差別について表現するシーンが度々登場してはいたが(それは黒人差別と同様に関わったり「クリーミィー」と罵られる箇所について)何かを究明したりメッセージ色を出すまでの洞察は感じられない。
本題は、あまりにも夢やロマンスめいたところに重きがあったようだ。
リアリティのあるオーストラリアについては、残念なくらい期待できなかった。

特殊効果によるシーンも取り入れていたり、ニコール・キッドマンのファッションも色々と変化を持たせてある(特に靴については、フェラガモが彼女の為に20足近く提供したらしい)
ヒュー・ジャックマンの無骨なカウボーイ役は、益々女性ファンを増やす要因にもなり得る(ただ、ああ云ったワイルドなタイプがダメな人もいるから・・・)
そのあたりも見どころとして注目できる。
ちなみにニコール・キッドマンは妊娠中ながら撮影に臨み、つわりとの格闘がメインだったそうだ。
一番ワイルドでタフだったのは、彼女なのかもしれない。

「ジャイアンツ」「風と共に去りぬ」といったロマンと冒険に溢れた大作ものに近い出来映えだ。
スクリーンいっぱいに土ぼこりが舞う中で、男女の恋が謳われている。
現代に甦えるとこんな風かな?と改めて認識できる作品だ。

もう一度、ハリウッドが引き返す場所は、勧善懲悪で夢や憧れを期待させるものだと思う。
ただそこにはリアルさや考えさせる時間も考慮に入れての話だ。
深みと交錯・・・この2つのテーマを忘れずに織り込んで欲しい。

jack0001