ヘルボーイ ゴールデン・アーミーのレビュー・感想・評価
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宮崎駿愛が全面に出された作品
デルトロ監督は大好きな作家達を公表しているが、それを作品の中で全開で出す中々面白い監督だ。前作ではラヴクラフト愛が凄すぎて、原作の設定を変えてまで至る所にラヴクラフト作品のエッセンスを出しまくった作品だった。
今作品では彼が愛してやまない宮崎駿作品への愛がちりばめられた作品だ。特に強く出ているのは「天空の城ラピュタ」だ。お話の基本プロットはそのままだし、ゴールデンアーミーはもちろんあのロボット兵達である。面白いのはエルフ達の設定。もちろんエルフ=ラピュタ人である。エルフの王様がパイプだらけの蒸気が上がるストーブの前で鎮座しているのは中々シュールだったが、ラピュタの産業革命時代の世界観から来ていると考えるとなるほどである。そういった視点でみるとこの作品の本当の主役がヘルボーイじゃないのも面白い。彼の半魚人愛はこの作品からも出ているのがよくわかる。
その他にも「もののけ姫」のシシ神は設定そのままで出ているし、この作品のトトロは猫が好きすぎて好物にまでしてしまっている。
特に面白いのは終盤に突然出てくる重要キャラの死神である。死神は漫画版ナウシカに出てくる庭園の主が元ネタである。つまりリズがナウシカ、死にそうなヘルボーイは巨神兵ということだ。これを見てデルトロ監督は漫画版のナウシカまでチェックしているのがわかってしまって笑ってしまった。
ラストの歯車バトルは「カリオストロの城」だし、他にも探せば色々なところに宮崎駿愛を出しているのがわかる作品だ。よくまぁこれだけのネタを取り入れて2時間の作品にまとめたなと関心してしまう。
ただそれ以上に彼のオブジェ愛があふれていていて、元ネタに負けない魅力があり観ているだけで楽しくなってくるデルトロ監督らしい作品だった。
全キャラに魅了された
人間と協働する悪魔であるヘルボーイ等が、人間に攻撃を目論む魔人の王子と戦う。王子は無敵のゴールデンアーミーを起動させるが、彼の妹の自己犠牲によって死に、ゴールデンアーミーも永遠に封印される。
ヘルボーイは戦いの中で妻が自身の生きがいであると気づき、属していた組織をやめ、やがて産まれるだろう子供との平和な暮らしを望む。
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全キャラクターが好きです。画面の端に一瞬小さく出てくるやつまで、全部好きです。特に、エンジェルオブデス、おできの赤ん坊、エレメンタル、ヌアラ王妃が好きです。次々目に入るクリーチャーデザインが、この映画の大きな魅力であることは、間違い無いでしょう。エンジェル・オブ・デスはフィギュアが欲しい。私は今までフィギュアなどはあまりコレクションしてませんでしたが、これは欲しいなあ。
ヘルボーイとエイブラハムコンビも良い。表情筋はモンスターだから(というより作り物だからと言ったほうが正しいけど)そんなに細かくないけど、仕草やわずかな動きで豊かに表情をだしていて、味わい深く、良いです。二人が酔っ払って人間味全開なシーンは微笑ましかったです。
今作では、キャラ同士の強い関係性が目立っています。ヌアラとヌアダの絆、ヌアラとエイブの恋愛、ヘルボーイの夫婦関係。この流れだと、イブの産むであろう双子にも、何かしら絆があるんじゃないか、と予感させられます。
アクションにはスピード感がありました。特にヌアダ王子の槍アクション。フツーにアクション映画として楽しめるくらいの勢い。伸縮する長刀というアイディアもキマっていて、他のアクション専門の界隈に突っ込んでいっても存在感放てるくらいだと思いました。
ゴールデンアーミーのギアがスゴイ。やられても再生する敵キャラは映画や漫画で多くありますが、ゴールデンアーミーは部品が自立して動作し復元する機能を持っています。昔の技術で、現代文明でも敵わないくらい優れている例を知ると驚きますが、それに似た驚きが感じられます。現代技術を凌駕するオーパーツとは、ロマンじゃないですか。
最後、ヌアダのところへ向かう動機はイマイチ分かり辛かったです。リズの愛する人への思い、というのは分かるが、そのためならヒトが犠牲になってもいいと言っているように聞こえて、極端に過激な感じがします。敵を封じたままにヌアダを倒せる自信があったのでしょうか?いや、やはりどうも賢い行動には見えず、モヤっとしました。
ギレルモさんの映画全般で共通かもしれないですが、SEがとても良い効果を発揮していますね。ティース・フェアリーのコチョコチョと鳴る体の音、エイブがコンタクトをつける時のパシッという音、剣の振動がキインと響く音、そして肉とか粘り気のあるもののグチョグチョ音。普通なら聞こえないような音でも自然に付けて、とても触覚的に感じさせられます。気持ち悪く感じられる時もありますが、私などはむしろその気持ち悪さを期待してギレルモ作品を観ています。
感覚が倒錯しているわけではないのです。非日常の刺激というか、映画でしか味わえない強烈な体験をしているというのが、ちょっと嬉しくなります。ただしハイクオリティな映画で、というのが条件ですが。
原作未読 前作未見
パート2
との事だったが、1を観てなくても全然楽しめた!
登場キャラも個性があって良かったが、最後の王冠が炎で溶けるのが・・・
だったら、最初から取り敢えず溶かしておけばってなる(笑)
豊穣な嘘
ビールと葉巻と猫が好き。短気な乱暴者だけど、好きな女には、からきし弱い。そして、ある種の潔癖さを持っている。
「タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない」
そんな言葉がフィリップ・マーロウより似合ってる。ヘルボーイはハードボイルドな男っす。
ヘルボーイ以外の登場キャラも、それぞれ弱点欠点ありながら、ある種の潔癖さ頑固さを持っている。
主要キャラから通りすがりのクリチャーまで、己のスタイルを貫いている。
歯の妖精、おできの子ども、ウィンク、森の精霊、ゴブリン、死の天使…みんな、いい。デルトロのありったけの愛が透けて見える、豊穣な異界の住人。
ヘルボーイが森の精霊を撃つのを一瞬ためらうところが、いい。それでも人間を救うために撃つ。その哀しさよ…。森の精霊は撃たれた後、ヘルボーイを慰めるかのように美しい花を咲かせてくれる。これをデルトロの愛と呼ばずして何と呼ぶ!!
「映画館には,嘘を観にいく」と曾て色川武大が書いていたけど、どうせ観るなら、こんな豊穣で優しい嘘がいい。
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