劇場公開日 2009年1月9日

  • 予告編を見る

「不滅のヘルボーイ」ヘルボーイ ゴールデン・アーミー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不滅のヘルボーイ

2022年3月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

興奮

マイク・ミニョーラのコミックを基に、ギレルモ・デル・トロ×ロン・パールマンのタッグで描いた“悪魔ヒーロー”第2弾。
好評を博し、スタッフ/キャストもほぼ続投、才気ある監督の続編とならば、世界観やビジュアルや面白味はより深く濃く。

キャラや設定は把握済みなので、すんなり作品世界へ。
今回の題材の伝説(人形アニメ劇なのが秀逸!)、敵の動機などを冒頭で簡潔に紹介し、お馴染みの面々の登場。
悩みとボヤキで薬が手放せないFBI局長のマニング。
クッション役のエイブ。
さて、我らがヒーローはと言うと…、いきなりリズの念力発火でふっ飛ばされて登場。リズと絶賛喧嘩中のヘルボーイ。
キャラたちの個性、軽快なやり取り、ユーモアはますます好調。
マイヤーズが南極左遷になってしまったのは残念だが…。

捜査でまたしても“目立って”しまったヘルボーイ。
お目付け役として、BPRDに新メンバー。
“エクトプラズム体”の機械人間、ヨハン。
超有能&天才エージェントで、頭ガチガチの“ミスター規則”。
性格も考え方も真逆。言うまでもなく、ヘルボーイとは…。
ヨハンのキャラもユニーク。

監督をバトンタッチした『ブレイド2』の時と然り。
コミックのエンタメ性は勿論の事、ダークさやドラマ性は増し、あらゆる面にこだわりが。
それが最も反映されたクリーチャー、ビジュアルの数々。
見た目はキモ可愛いけど、噛まれたらヤバい! トゥース・フェアリー。
街中に現れ大暴れする森の神、エレメンタル。
下半身は無いけど、気のいいゴブリンの鍛冶職人。
終盤直前、リズにある選択を迫る強烈インパクトの“死の天使”。
ハリポタ魔法世界には“ダイアゴン横丁”があったが、こちらは様々なクリーチャーや魔物で溢れる“トロール市場”。
エルフの国への出入口である“石の巨人”。
これらはまるで、シリーズ2作の間に手掛けた傑作『パンズ・ラビリンス』を見ているかのよう。
美術、特殊造形、メイク、スーツ…目を見張るビジュアル・センスは、それこそ“デル・トロ市場”!

焦れったいくらい不器用なヘルボーイとリズの恋。実は、リズの身体に…。完全恋愛ドラマ。
異形の者への眼差し、理解。差別、偏見は本作のメインテーマの一つ。本作はより露に。
トゥース・フェアリー退治後は一躍人気者に。が、被害大きいエレメンタル退治後は、一転してバケモノ扱い。赤ん坊を助けたにも拘わらず…。
それに対し、ヘルボーイは…。哀愁、やるせなさ…。
自分とは違う者への敵意、手のひら返し、人間の傲慢…。心に魔物が潜む。

今回の敵は、伝説の不潔…じゃなくて、不滅の軍団“ゴールデン・アーミー”を復活させ、人間どもを滅ぼそうとするエルフの王子、ヌアダ。人間と休戦協定を結んでいた父王を敬愛しつつも殺し、野望に燃える。
双子の妹、ヌアラ。兄とは違って穏やかな性格。和平を望む。
悪の兄と善の妹。各々の信念、主張も分かりつつ、悲劇的な役回り。
双子故、一心同体。つまり、一方が傷付けば…。

見所の一つ、タイトルにもなっている“ゴールデン・アーミー”が復活しなければ話にならないが、その引き金となってしまったエイブ。
エイブは実は、ヌアラに…。
本作はエイブの悲恋物語でもある。
力や頭脳は良くても、恋愛に関してはまるでダメダメのヘルボーイとエイブ。
二人で恋愛ソングを合唱するシーンはユーモラスでありながら、しみじみ。
ホント彼ら、人間以上!

難点も無きにしも非ず。
“ゴールデン・アーミー”の見せ場が少ない。
ヌアダの華麗なアクションやクリーチャーとのバトルなどアクションも豊富だが、ちとインパクトに欠けた。(最も、リブート版のような過剰にとは言わないが…)
でもそれらを差し引いても、今回も面白さは充分。
今回も魅せてキメてくれたぜ、悪魔ヒーロー!

この面子での第3弾を見たかったのだが…、
オスカー監督となり、デル・トロは今やスケジュールを押さえるのが困難なほどの多忙監督に。
リズ役、セルマ・ブレアは難病を患い…。
もうリブート版も作られてしまったので、実現はほぼナシかもしれないが、
再々召喚される時を待ち続けている!

近大