劇場公開日 2009年10月31日

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ジェイン・オースティン 秘められた恋 : 映画評論・批評

2009年10月27日更新

2009年10月31日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

これまでの人物像を覆す、ジェイン・オースティンの新たな魅力を提示

この映画は、ジェイン・オースティンが激しい恋を体験していたという新しい伝記をベースにしているが、その新事実より、才気煥発で思ったことをズバリと口にするジェインのアウトゴーイングな性格に驚かされた。喧嘩しながら惹かれ合っていくトム・ルフロイとの恋は、まるで現代女性のように行動的だ。

オースティンは思慮深い観察型の人間。周囲を鋭く観察するが、感じたこと、考えたことは胸の中にしまい込み、それが噴き出すのは小説を書くときだけ。42年の質素で変化の少ない生涯と彼女の作品から勝手にそう思いこんでいたのだが、イギリス人には別の印象があるらしい。キーラ・ナイトレイの「プライドと偏見」を見た時も、鶏が裏庭を走り回るベネット家の描写に、これがイギリス人のコモンセンスなのかと驚いたものだが、このはっきり自己主張する女性こそが、イギリス人が大好きなジェイン・オースティンなのかもしれない。恋する男の将来を思い、身を引くことで生涯彼を愛し続けようとする彼女の強い精神力にも、イギリス人のオースティン贔屓が表れている。

ジェインとオースティン家がそのままエリザベスとベネット家に重なるなど、「プライドと偏見」をモデルにした登場人物たちも興味深い。富豪のウィスリー氏にはミスター・ダーシーの要素があるし、ジェインの恋を邪魔する牧師は「プライドと偏見」でエリザベスに求婚する鈍感な牧師コリンズだ。小説をモデルに作られた役なのに、実際にこんな男がいたからジェインは小説の中に採り入れたのだと錯覚させられるからおかしい。でも、トム・ルフロイを思わせる人物はオースティン作品には見あたらない。本当に愛した人だから書けなかったのか。実らぬ恋の切なさに涙が出た。

(森山京子)

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