「『ロード・オブ・ザ・リング』より10年もたって、なぜか迫力が退化」ホビット 思いがけない冒険 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
『ロード・オブ・ザ・リング』より10年もたって、なぜか迫力が退化
総合70点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:70点|ビジュアル:80点|音楽:70点 )
なんか戦いの場面の演出が緩い。例えば地下のゴブリンの洞窟で、たくさんのゴブリンに襲われても地下に落下しても誰も死なないし怪我すらもしない。敵のやっつけ方もまるで子供騙しで、牛くらいにどでかい強そうな化け物の狼も、貧相なホビットのしょぼくれた一撃で倒せたりする。主人公たちの危機には彼らはいったいどうやってそれを知ったのか、あるいは今までどこで道草くってさぼっていたのかと疑いたくなるが、必ずどこからともなく鷲の援軍が現れたりするのも『ロード・オブ・ザ・リング』のときからのお約束。
ここまでくると、その様子は『インディ・ジョーンズ』でも観ているかのような安全性や滑稽さすら感じてしまって、迫力や緊迫感というものがない。いくら神話の世界とはいえども、ちょっとは真剣に命懸けの戦いや現実的な脱出なんかの演出も取り入れて欲しい。『ロード・オブ・ザ・リング』よりもその部分での演出は、子供向けというか退化すらしてしまっていて期待はずれ。
それと12人のドワーフたちは王以外は活躍が少ないし、そのため個々の存在感が薄い。冒頭で勝手にドワーフたちがホビットの家に侵入して盛大に食べ物を食い尽くす場面は無駄に長い。しかもこの食べる部分が、結果的にその他大勢のドワーフたちの最大の活躍の場だったことが悲しいことに後でわかってしまう。最初から鷲に乗って目的地まで行っちゃえばすぐに冒険も終了だけど、映画作りのために盛り上げようなんて考えるから、山に登って地下洞窟に落ちて戦ってとご苦労様だよな。
とさんざん文句も書いたが、本作品の映像の持つ世界観と質感の高さには相変わらず引き付けられる。ただ前作よりも10年もたってるのにこれかよという失望感があったのは拭えない事実。とりあえず次回作もいずれ観てみよう。