劇場公開日 2008年9月6日

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「これも映画讃歌の一本」落下の王国 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0これも映画讃歌の一本

2024年9月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
汝、落下を畏れるなかれ。
この美しき世界を仰ぎ見よ。

スタントマンであれば、ある意味「落下する」のは、当たり前ということで。
その点から『落下の王国』(原題はザ・フォール)とする本作の題名は、言い得て妙といったところだと思います。
乗り物や急な崖などから「落ちて、落ちて、落ちまくる」というのが、いわば「スタント」そのものというわけですから。

そのスタントマンのロイが、スタントに失敗して怪我をしてしまったのは、恋人(映画女優)に去られてしまったことで、その失意(文字どおりの「落ち込み」)の中で、鉄橋から飛び降りて走っている馬に乗り移るというスタントに失敗してしまったからの様子です。
(作中に、そんな会話があったようですし、実際、彼女は、今の彼氏の車で病院にまで来ているものの、下車しようとしていない。)

彼の自殺願望は、そんなところに胚胎していたようです。

しかし他面、自殺願望にすっかり憑依(ひょうい)されてしまっていると言いつつも。
一面では、ロイは、スタントマンとしての矜持は、捨ててはいなかったのではないかと、評論子には思えてなりません。
退院後のアレクサンドリアのお母さんの言によると、ロイは、その後も新作に、スタントマンとして出演し続けていたような様子でしたから。
勝手な思い込みかもは知れないのですけれども。
少なくとも…そう信じたいところです。評論子は。

アクション系の映画の製作には欠かすことのできなかったスタントマンにスポットを当てた一本として、これも映画に対する愛があふれる「映画讃歌」の一本として。

そして、ロイの作り話も、アレキサンドリアの切実な想いで変えられたように、最後の最後で「生きることへの希望」「生きようとすることへの渇望」が鮮やかに描かれていた点では、「素晴らしい」とも言えたと思います。
秀作であったと思います。
評論子は。

(追記)
作品の冒頭、ロイと会話するアレクサンドリアとロイの目に、ドアの鍵穴を通して、戸外にいる馬の映像が逆さまに壁に投影されます。
おおよそ100年前に、ルミエール兄弟が水を満たしたフラスコをレンズ代わりに初めて映画を投影したことへのオマージュというほどの製作意図だったのではないかと思います。

そんなところにも、本作の「映画讃歌」としてのパーツが埋め込まれていたのではないかと思える一本でもあったことを、申し添えておきたいと思います。

talkie