「ミッションインポッシブる」落下の王国 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
ミッションインポッシブる
偶然Twitterで注意喚起に遭遇し、運よくBS松竹東急でのオンエアを捕獲できました。
少し前に他のチャンネルで録り損ねてたので当分観られないものと諦めてました。
発信してくれた方に御礼申し上げます。
原題はThe Fallなので「〜の王国」は日本版のタイトルなんですね。SFか異世界ファンタジーかと想像してしましましたが、どちらかというとおとぎ話。最後まで観ると納得できる邦題ではありました。単に「落下」だとスリラーっぽく聞こえるし。。
心に深い傷を負った青年が偶然知り合った少女と交流し、心を開いていく話…などと、あらすじだけ聞くと100%ダメそうな企画。なのに実際は序盤からぐいぐい引き込まれてしまいました。趣旨は「スイス・アーミーマン」とほぼ同じ、予算は何百倍だろうけど。。
脚本に「ナイトクローラー」の監督も参加していましたが、幹となるストーリーがありふれたものでも、マトモな枝葉がつくだけでこんなにも違うのか、と驚かされます。
こういう話だと子供のキャラ造形が重要な分かれ目だと思う。都合のいい女ならぬ、都合のいい子供になっていると途端にチープになる。むろん子役の力量もあるんでしょうけど、リアルな実在感がありました。旅の仲間たちもみんな魅力的。
あと言うまでもなく映えまくる圧倒的なロケーションと衣装、暴力的なまでの映像のパワー。美は暴力、かわいいは正義。
あたかも昔のハリウッド大作のごとく壮大すぎる映像の数々に、だんだんこれ予算大丈夫? と不安になったら案の定、大丈夫じゃなかった。
会社が倒れたりしたせいで現状こんなに見づらくなってるんですね。そりゃこんだけやればね…と頷くしかない。
メインのテーマはおそらく人が人に物語ることの意義だと思う。
個人的に興味深かったのは製作にデビット・フィンチャーが入っていること。
Netflixオリジナルの「マインドハンター」も、相手がシリアルキラーというフックはあるにせよ、人が人の話を聞くだけの行為には、それだけ人を引き込む力があるんだっていう土台のところで通じる作品でした。
あとタイトルバックのスローモーションの連打は、「ハウス・オブ・カード」のオープニングを連想させて、たぶん監督とフィンチャーはうまが合ったんじゃないかな、と思いました。あとはMVで世界中の人を驚かせたスパイク・ジョーンズも製作に参加してる。
そして映画の本質に迫るラストはちょうど今やってるデッドレコニングはじめ近年のトム・クルーズの姿にも重なって、ちょっとじーんとしてしまいました。
「地獄の黙示録」のように、壮絶な現場を経ながら映画史に名を残したフィルムの子孫であり、また石岡瑛子の貴重なレガシーという意味でも、たとえ破産しようがこれを完成させたなら、監督も悔いなしでは、と想像します。
単なるカルト映画にしておくのはあまりに惜しいので、どうにかしてもうちょい触れやすいようにならないものでしょうか。