「目先の誘惑に弱いアホvs美人なだけの痴女」サヨナライツカ まきこさんの映画レビュー(感想・評価)
目先の誘惑に弱いアホvs美人なだけの痴女
Amazon primeにて試聴。
映画としての感想とストーリーとしての感想を述べる。
映画として
無駄なシーンが(SEXを除けば)なく、完成度の高い映画だった。
特に、序盤の野球のシーンは良い。
主人公は、チャンスでバントを指示される。
一度は抗議するものの、説き伏せられる。
にもかかわらず、ホームランを狙う。
結果論では見事ホームランを打ち、勝利するのだが、指示を聞かずに、独断で強打に踏み切る。
周囲のことを考えずに、目の前の誘惑に負けてしまうアホさが上手く描かれていた。
当然指示を無視された監督上司は怒るのだが、怒るシーンは直接は描かれない。ここも上手い。
後に色欲に溺れていく怠惰な主人公に対する監督上司の反応を主人公の同僚が次のように説明する。
「ホームランの時より怒ってた」
直接怒っているシーンを写すのではなく、言葉で怒りをイメージさせる。
映画にもこういう楽しみ方があるんだな、と感心させられた。
さらには、このシーンのホームランボールが最後の最後まで中山美穂との思い出の品になっていく。
一見なんの変哲もない野球のシーンだが、巧みに埋め込まれた重要な場面だった。
このような周到さは全体に行き届いでおり、おかげで、変なツッコミ(ストーリーの矛盾点の指摘)を入れることなく楽しめたと思う。
石田ゆり子と中山美穂のツーショット写真が詩集から出てきた時は
「…!!(その伏線だったか!石田ゆり子)こえぇ」
思わず声が出た。
ストーリー
この話で着目するべきは石田ゆり子。
なんと言っても、題名の『サヨナライツカ』は石田ゆり子の詩集のタイトルだ。
心に残るのは次の一節。
どんなに愛されても幸福を信じてはならない
どんなに愛しても決して愛しすぎてはならない
主人公に心から愛されてはいない(最初に詩を書いた時点では「今後、愛されないかもしれない」)ことを理解していて、
それでも淑女として夫を愛する。
ただ、「疑問点」で後述するように、愛しすぎてもいない(かもしれない)。
その姿、考え方がありありとタイトルに刻まれている。
サヨナライツカ。
この含みを噛みしめるところにこそ、本作のみどころがあると感じた。
なお、主題と思われがちな西島ひでとしと中山美穂の関係は、目先の誘惑に弱いアホと美人なだけの痴女の情事に過ぎず、みどころが(西島さんの筋肉と中山美穂の肩と背中以外に)ない。
西島さんは何一つとして面白いことやウィットに富んだことは言わない。
見た目と運だけでモテている。
中山美穂は「あなたの夢に惹かれたの」とかそれらしいことを言っているものの、その「夢」は、いきなり押しかけてパンツを脱ぎすて、SEXした後に聞いたものだ。
見た目とホームランで惹かれてるだろ。
中身がなく、目先の誘惑に弱い美男美女という点では、最高のマッチング。
最後の最後まで惹かれ合うのもよくわかる。
疑問点
2つ疑問が残った。
①最後の石田ゆり子、息子2人の写真の1番右の男性は誰か?
西島ひでとしが飾っていた写真なので、単純に考えれば西島ひでとしだ。
しかし、どうも西島さんに見えない。
さらに、あれだけ西島さんを嫌っていたバンドマンの息子が楽しそうに肩を組んでいる。
和解したのだろうか。
さらにさらに、その写真を撮ったと思われる日、石田ゆり子が男を追いかけて、外で抱きつく。
この男の顔が映らない。
「え、誰?もしかして石田ゆり子にも他に男がいたのか?」
ここで顔を映さないのは絶対にわざとだ。
製作者側の演出だ。
石田ゆり子もただ西島さんを信じて尽くしてきたわけではないのかもしれない。
愛してはいたが、愛しすぎてもいない。
その可能性を暗示していると思った。
西島さんがその写真を飾るのは、今までの家族が幸せそうで嬉しいから。そう解釈しても無理はないと思う。
②中山美穂はホテルのスタッフだったのか?
最初、中山美穂はVIPルームに住むVIPだった。
25年後、再会のシーンで中山美穂はホテルのVIP対応スタッフとして現れる。
ここで、次の仮説が立つ。
「中山美穂はVIPだったが、お金がなくなってしまった。しかし、西島さんを待つためには常にVIPルームの近くにいたい。それに、思い出の部屋だ。だから、VIPルームの接客対応としてホテルに雇ってもらうことにした。」
しかし、次の再会ではまたVIPルームを使っていた。
これはどういうことなのだろうか。
考えられるのは3つ。
1つ目。先の仮説通り、ホテルのスタッフになった。お金を貯めて、最期はVIPルームを使った。
2つ目。先の仮説通り、ホテルのスタッフになった。お金はなかったが、ホテルからの情で最期はVIPルームを使わせてもらえた。
3つ目。そもそも先の仮説が誤りで、西島さんがきた時だけ、スタッフとして対応していた。それにより、西島さんに仕事といって近づくことができた。
1つ目は、まず棄却したい。
ホテルのスタッフとして働き、いくら倹約したとしても、医療費とホテルのVIPルームの宿泊費を支払い続けるのは難しいだろう。お金があるなら、そもそもスタッフになる必要がない。
2つ目も棄却。
ナースっぽい人が西島さんに中山美穂の死を伝える時、
「ホテルの配慮」的な言葉があったと思う。
しかし、その「配慮」はVIPルームの格安での使用にまで及んでいたのかどうか。
いくら中山美穂がしばらくVIPルームを使用し、その後はホテルの従業員として献身したとしても、ホテル側が一室での療養を認め、かつ、VIPルームの使用を認めるとは考えにくい。
療養を認めるだけでも、「この部屋では死者が出た」いわく付きの部屋になりかねない大きなリスクだ。
「ホテルの配慮」は、あくまで療養を認めていただけだと考える。
となると、3つ目が濃厚か。
ただ、これも確証を持てない。
根拠が見当たらなかったからだ。
ストーリーには大きく影響はしないかもしれないが(少し気持ち悪いな、くらい。)、気になったので疑問点として挙げておく。
以上、映画としては完成度が高く、みどころもあった。SEXシーンも見れるので、欲求不満な人には男女問わずおすすめ。
ただ、ストーリーとして新たな発見や、感極まる場面はない。その点は、ストーリーを重視する人にとっては少し不満かもしれない。
以上から、映画としての完成度は☆5つ、ストーリーが☆1つ。間をとって総合☆3とする。
おわりに
お綺麗な姿の川島なお美さんをまた見ることができ、嬉しい気持ちになりました。
本当に素敵な女優さんだったと思います。