劇場公開日 2008年9月27日

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「コドモだからこそ。」コドモのコドモ いきいきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0コドモだからこそ。

2008年9月17日

泣ける

コドモがコドモを妊娠し、コドモたちだけで出産しようとする。
 事実を素直に受け入れるのは、
 コドモたちと、おばあちゃん、おじいちゃん。

 春菜(甘利はるな)は小学5年生で11歳。
 仲が良くて幼なじみの、いじめられっこヒロユキ(川村悠椰)を
 いつも助けているような、元気で、
 ちょっと勝気で言葉使いもイマドキの女の子。
 ある日、公園にヒロユキと一緒に行き、ヒロユキの立ちションを観ながら、
 あっけらかんとアソコのお話をしちゃったりし、
“くっつけっこ”という遊びを興味本位で始めてしまう。
 そして、担任の八木先生(麻生久美子)が行った性教育の授業により、
“くっつけっこ”がどういうことかを知り、
 しばらくして春菜は妊娠してるのではないかと思う。
 お母さん(宮崎美子)にも、お姉さん(谷村美月)にも、
 おばあさん(草村礼子)にも、お父さん(斉藤暁)にも、
 おじいさん(榎木兵衛)にも、大人たちには相談できないまま、
 お腹はだんだん大きくなっていき、
 最初は優等生の美香(伊藤梨沙子)に知られてしまう。
 そして、友人たちにも知られ、ミツオ(帯金遼太)、真由(大熊彩花)、
 珠(須藤瞳)、ダイゴ(竹森雄之介)、万作(山田清貴)は、
 コドモたちだけでコドモを守ろうとする。

 小学5年生の女の子が妊娠し、
 出産するという さそうあきら のコミックを、
 神童 に続いて 萩生田宏治 監督が実写で映画化。
 賛否両論は覚悟の上でしょうし、
 設定を変えないで話題になるのも計算済みか、
 と思わなくもなかったけども、
 ファンタジーで包み込んでしまっていいのかと、
 思わなくもなかったけども、それでも、
 コドモたちのコドモが出来てしまったという事実に向き合い、
 素直に受け入れ、何とか成し遂げようとする姿に、
 それを真摯に描こうとする姿勢には、
 僕も素直に受け入れたくなってしまう。

“くっつけっこ”と表現されているセックスシーンはもちろんありません。
 児童ポルノではありません。
 性教育の授業シーンではある程度説明されてますが、
 PG指定もR指定もありません。
 コドモだけで観てしまうのはいいのか、悪いのか分かりませんけど、
 親子で観て、大いに語り合うのには結構なことだと思います。
 コドモがこの作品を観て、どのように感じるのか、
 興味がある所でもあります。
 実際に会場では親子連れもチラホラ見受けられました。

 女子の前で立ちションをしてる時点で、
 もう僕にはありえなかったことで、ファンタジーだよ。
 そんな感じでラストまで、あっけらかんと、のびのびと、
 のほほんとした感じでいっちゃうのです。
 コドモは事実を素直に受け入れ、頼もしいと思えるほどの、逞しさや、
 力強さを感じさせるのです。
 過激な設定にもかかわらず、嫌な感じなど受けず、
 面白く観る事が出来るのです。不思議といえば不思議であります。

 映画 JUNO では16歳。連ドラ 14歳の母 ではもちろん14歳。
 この作品は11歳。実際に11歳で妊娠は出来るのでしょう。
 相手が同じ学年でも出来るのでしょうか、それは分からん。
 張り切っていた先生も妊娠に全く気付かず、
 コドモの変化は見逃さないような描写もあった母親も、
 家族の誰もが出産近くまで気付かない。ありえないよなぁ。
 いくらガツガツとご飯を食べてたって、いくらなんでも気付くだろう。
 洋服とか平気だったのかな。
 周りが誰も気付かずに・・・という、
 いや~なニュースをたまに目にしますが、
 小学生のあの小さな体で、う~ん。
 よく小学生が身重の体で平気で普通に歩けてたよな。
 優等生の美香は真剣に春菜の事を心配するけど、
 春菜も含めてコドモたちは、理解出来ているのか、出来ていないのか、
 とても楽観的で、それもまた面白いとさえ思えてしまう。
 そして、よく出産できたよな。安産だよ。奇跡だよ。
 そんなことを思っていても、出産シーンでは無理だろうと思っていても、
 雪の中のオンボロな小屋で追い詰められ、頑張っている姿に、
 頑張って命を産み落とそうとしてる姿に、コドモたちの頑張りに応援し、
 安堵してしまう。

 教師も母親も気付けない中で、おばあちゃんは感じ取り、
 よく頑張ったねと、春菜を褒めてくれ、泣ける。
 そして、コドモが出来るということは、妊娠するということは、
 コドモを生む準備が出来ていたんだよ。というようなことを言ってくれる。
 妙に納得してしまう自分が居る。
 それだけを聞くとアホかと思うでしょうが、
 作品を観てる時の僕はそんなことを思わなかった。

 そう、おばあちゃんは素直に受け入れる。
 おじいちゃんも、宝だ、と受け入れる。ちょっとボケ気味だけど・・・。
 知識の乏しいコドモたちも、多くの経験を積み重ねてきて、
 人生で多くのモノを背負ってきたはずの、
 おばあちゃんも、おじいちゃんも、同じなんだよ、と言わんばかりに、
 素直に受け入れる様子には、親もPTAも騒いでいる姿が、
 バカバカしくも見えてきて、面白い。

 面白い、面白いと言っている僕は、
 設定だけで批判してしまうような良識派の方たちにとっては、
 アホな大人に映るのかもしれないけども、
 批判するなら観て欲しいと思います。

 命を前にし、純粋にその命を守ろうとし、考える前に、動く。
 それが批判される要素でもあるし、
 考えないで動くことが出来るコドモたちの素晴らしさでもある。
 この作品を批判するオトナの周りでは、小学生はないとしても、
 いや小学生でも、ホントにありえないことでありましょうか。
 好奇心旺盛なコドモたちを、
 情報が溢れかえっている現代で生きるコドモたちを、ちゃんと理解して、
 見守れているでしょうか。
 あって欲しくないことですが、考えさせてくれる作品で、
 コドモたち目線で、真摯に作られている作品だと思います。
 興味がある方は、是非ご覧下さい。

 僕はこの作品のコドモたちを演じたコドモたちの、
 ナチュラルな演技に魅了されっぱなしでした。

 コドモどころか、結婚も出来ず、
 自分のダメダメな遺伝子なんか残さないでいいと思っているような、
 オッサンの感想でした。

いきいき