「ベンの優しい嘘と究極の愛が一杯詰まっていました。そんな主人公を慈愛の籠もった目線に哀愁をたっぷり滲ませてウィル・スミスは演じきっていたのです。」7つの贈り物 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ベンの優しい嘘と究極の愛が一杯詰まっていました。そんな主人公を慈愛の籠もった目線に哀愁をたっぷり滲ませてウィル・スミスは演じきっていたのです。
まず、見終わった人にはこのストーリーと設定に嫌悪感を抱く人も出てくるでしょう。それだけラストの謎解きでは、衝撃を受けました。
前作『幸せのちから』と同様、不幸な身上の人たちを優しく見つめる視点は変わらないものの、本作では十字架を背負わされたような主人公の影の不文がストーリーに重くのしかかってきます。
前作のイメージを期待して見ていたのですが、大きく予想と違ってショッキングでした。この作品ほど、ネタバレするとつまらなくなる作品はないだろうと思うので、中身はなるべく伏せておきます。
すべては冒頭の主人公ベンが自殺予告の電話を病院にかけるところから始まり、いきなりフラッシュバックするのです。ラストに再びこのシーンまで戻ってくるときまで、説明らしい説明もなく、ただただ訳も分からずベンが国税庁職員の身分を使って自分で調べ上げ、リストアップした7人の不幸な人たちに、心から尽くしていくところが延々と続きます。なぜベンはこんなに親切なのか。何か他に目的はあるのか。そしてその動機は?
物語は、一切それらの疑問答えようとしなく、突き放していたため、終盤のネタバレが始まるまでは眠くなってしまいました。
ベンの親切さの裏には、時折フラッシュパックする交通事故のシーンの断片によって、2何か過去の事故や事件が関係しているものとは、察しがつきました。
ところが終盤になってみると、7という数字の意味や途中の何気ないエピソードの数々が、重要な伏線になっていたことにびっくりしました。これはもう一回見て確認したくなる作品でしたね。
ベンの贈り物とは、本当に送った人の人生を大きく変えるものでした。でもこんなに悲しみの涙に包まれる贈り物なんて初めてです。その贈り物にはベンの優しい嘘と究極の愛が一杯詰まっていたのです。
それにしても本作のウィル・スミスの演技はすごいです。嘘くさく見えるベンの親切さを神様のような慈愛の籠もった目線に哀愁をたっぷり滲ませて、ベンという人物にリアルティをを感じさせてくれました。
ところで結末には異議ある人でも、途中のベンの親切さには暖かさやさわやかさを感じた人もいることと思います。
クレクレくんが多い世の中で、ベンのような与えようとする行為を見せつけられますと、これはこれで与える人って幸せなんだなと実感したことでしょう。問題はどこまで与えるかです。時にはすべてを与える覚悟も必要なのかもとこの作品を見ていて小地蔵は思いました。
その源流にあるものは、キリスト教精神そのものです。人類のすべての罪を背負われて十字架にかかられたイエス様のごとく、自分もまた与えきりの人生を送りたい。キリスト教を信じる人の根底にある、イエス様に追慕する心が、このような作品を生み出す「幸せのちから」になっているのでしょうね。