劇場公開日 2008年8月2日

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闇の子供たち : インタビュー

2008年7月30日更新

阪本順治監督インタビュー

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息子を助けたい父親(佐藤)とタイの子供を助けたいNGOの音羽(宮崎)が衝突
息子を助けたい父親(佐藤)とタイの子供を助けたいNGOの音羽(宮崎)が衝突

闇の核心に迫れば迫るほど苦悶する南部の一方で、息子の命を助けたい一心でタイでの臓器移植手術に臨む日本人夫婦(佐藤浩市、鈴木砂羽)も登場。タイ人の子供の命をとるか、日本人の子供の命をとるか、どちらにも転べない状況が浮かび上がってくる。

「彼ら夫婦が行うことを犯罪として断罪するという方向には、僕自身はもっていけませんでした。それで、彼らの葛藤みたいなものをそのまま表してみたんです。あとは見た人がその葛藤をどう受け取るかっていう判断ですよね。臓器売買に関しては、カンパが集まって、海外で手術をするっていう日本人の子供の美談しか聞かないじゃないですか。それにどうして子供はお金を集めて海外でしか手術しないんだろうって長い間思っていたんです。映画では極端な描き方でしたが、この問題は皆が何かおかしいということを分かっていながら、陰に追いやってきたわけです」

「なぜ、この映画が必要なのか」を タイの子役たちに詳しく説明したという
「なぜ、この映画が必要なのか」を タイの子役たちに詳しく説明したという

KT」と同様に海外での撮影を敢行した本作だが、デリケートなテーマを扱っているだけに俳優たちとはかなりのディスカッションを重ねたという。

「日本の俳優とはもちろん、タイの人ともかなり突っ込んで話し合いました。当然タイの俳優たちは、この映画で扱うような酷い事実や、何でこの映画が作られなければならないかということを知っていて参加しているわけです。だから、どう表現するかということはよく話し合いましたね。日本の俳優もタイの俳優も納得して『全部分かった』という返答がないと、撮影には入らない現場でした」

街で見かける日本の子供たちに対しての視線が、この映画を通過したことによって変わったという阪本監督。「子供たちが虐待によって受ける傷は一生消えない」と強調する。

子供たちが虐待によって受ける傷は一生消えない
子供たちが虐待によって受ける傷は一生消えない

「結局、世の中どこで起こっていることも、大人同士が戦って、お互いに血を流して、傷つけあっているわけだけど、子供だけは絶対に大人の暴力から守らないといけない。それは子供のときに傷つけられると、もう“普通”がどういう状態か分からなくなるし、自分がどう“普通”と違うかも分からなくなってしまうからなんです。だから、NGOは基本的に子供たちを救うことは出来ても、全員のケアはしきれないわけです。子供らしさを取り戻してあげようと思っても、ある種受け取る側の自尊心を含めて、子供なりの根っこがないと、いくら話しかけてケアしても、元には戻れないんです。これは大人の女性がレイプされて傷ついてトラウマになるのとはまったく違っていて、子供たちが受けた傷はトラウマにさえならないんですよ」

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