シティ・オブ・メン : 映画評論・批評
2008年8月5日更新
2008年8月9日よりシネ・アミューズほかにてロードショー
昼の陽光と夜の闇の深さのなかで強い感情が炸裂する
「アントニオ・ダス・モルテス」のグラウベル・ローシャ監督らの“シネマ・ノーボ”は1960年代に世界を驚倒させた。そして本当に久々に、ここ10年、「セントラル・ステーション」(98)のウォルター・サレスや「シティ・オブ・ゴッド」(02)のフェルナンド・メイレレスといったブラジル映画に、いままた世界が注目しつつある。
リオ・デ・ジャネイロ、その高台のファベーラと呼ばれるスラム街。そこで抗争を続けるドラッグ・ディーラー、ギャングたちを描いた「シティ・オブ・ゴッド」は各国で大ヒット。
原作者パウロ・リンスが関わったTVシリーズも国民的人気番組となり、「シティ・オブ・ゴッド」や、今年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した「エリート・スクワッド」(ホセ・パディーヤ監督)によってファベーラといえば「暴力」という印象も広まった。だが、「TVドラマで毎週、銃撃戦というわけにもいかない。それにファベーラにだって世界のどの町とも変わらない日常だってあるんだからね」とパウロ・モレッリ監督が語るように、この新作映画「シティ・オブ・メン」ではTVシリーズで描かれたファベーラの日常が土台になっているのだ。
前作にも出演していた若い2人が演じる主人公たち。TVからの「少年時代の彼ら」の映像もふんだんに使われている。成長と、父親との葛藤とその不在、若くして自分が父になってしまったとまどい。銃撃戦も、はじけるユーモアもふくめ、昼の陽光と夜の闇の深さのなかで強い感情が炸裂する作品だ。
(大久保賢一)