劇場公開日 2008年10月11日

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僕らのミライへ逆回転 : 映画評論・批評

2008年9月30日更新

2008年10月11日よりシネマライズ、シャンテシネ、新宿バルト9ほかにてロードショー

安易な焼き直しばかりのハリウッドへの痛烈なアンチテーゼ

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ミシェル・ゴンドリーは「モノ作りの楽しさ」を良く知っている監督だ。奇想天外な発想を、その面白さが際立つやり方で映像に焼き付けていくセンスと、アッと驚くようなアイデア。そんな彼の映画の持ち味が生き生きと輝くこの映画は、おもちゃ箱のように楽しく、胸が締めつけられるほど切ない、彼の映画へのラブレターだ。

いまどきVHSビデオしか置いていない、片田舎のつぶれかけたレンタルビデオ店。電磁気を帯びた常連客のせいで、テープの中身が消えてしまった! 慌てた店員は、過去の名作を勝手にリメイクしてしまおうと思いつく。アリモノを使った、その場しのぎでデタラメな撮影。このへんのおかしさは、ジャック・ブラックのキャラも手伝い、いわゆるオバカ映画的な笑いとパロディの楽しさ満載。が、それだけでは終わらない。バカバカしくも工夫に満ちたこの撮影行程に、映画が本来もっている楽しさがあふれ出すのだ! 映画の面白さはアイデアが作るんだ、ということを身に染みて感じさせられる。

テクノロジー誇示と安易な焼き直しばかりで、こうした楽しさを忘れているハリウッドへの痛烈なアンチテーゼ。そしてラストには助け合う人々の温かさや、失われていく懐かしいものへの哀惜がひたひたと画面を満たし、涙腺を直撃。映画好きなら、きっと自分でもスウェーディッシュ(リメイク)映画を撮りたくなるはずだ!

若林ゆり

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