劇場公開日 2009年4月18日

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「一見軽薄なコメディに、リアルティを持たせているのが、古都ならではの陰陽師の世界。本木監督作品の絶妙な間の取り方により、思わずクスクス笑ってしまう上質なコメディに仕上げています。」鴨川ホルモー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0一見軽薄なコメディに、リアルティを持たせているのが、古都ならではの陰陽師の世界。本木監督作品の絶妙な間の取り方により、思わずクスクス笑ってしまう上質なコメディに仕上げています。

2009年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 こんなに試写会会場が爆笑に包まれることは今までなかったくらい、爆笑に次ぐ爆笑でした。チラシからは、単なるオバカ映画かと思っていましたが、そこは本木監督作品。絶妙な間の取り方と、予想不可能な場面展開で、思わずクスクス笑ってしまう上質なコメディに仕上げています。

 原作が万城目学だけに、単なる学園ドラマで終わるはずがありません。一見軽薄なコメディに、リアルディを持たせているのが、京都という古都ならではの背景と伝統。そこにつけ込んで、陰陽師の式神を持ち出し、呪力を競技化したものとしてホルモーという珍妙な儀式を描いているのです。
 そして本作の真の主役は、ホルモーで戦い会う『オニ』と呼ばれる式神たち。最大2000匹のキモ可愛い「オニ」たちが、ラストでは京都の名所という名所を無尽に駆け回ります。
 ちなみに「オニ」の身長は30センチ。体重は1キロのミニサイズ。オニの姿は、ホルモーを行うものしか見えないはずなのに、何故か実況中継のテレビ画面とホルモー解説者の笑福亭鶴光には見えてしまうようです(^^ゞ
 「オニ」の姿って、扱う主人の個性によって変わるんですね。それも面白いところで、操るものがメガネかけていると、「オニ」たちもメガネ付きに変わります。
そしてダメージを負うと「オニ」の顔はへこんでいきます。埋没すると消滅するのだけれど、その直前に何故かレーズンを補強すると回復するのです。
 ですから戦いの陣形の中には、必ずレーズン補給部隊が編成されていました。あとホルモーを行う団体の部室には、どうりで大量のレーズンが買い込んあったのですね。

 主人公の安倍は、そんなホルモーと言うことを一切知らされず、青嵐会を普通のレクレーションサークルと勘違いさせられて、入部してしまいます。
 しばらくして、青嵐会とは「オニ」を操り戦わせる謎の祭り“ホルモー”を行うサークルだと告げられるけれど、「オニ」が見えない安倍にとってうさんくさ過ぎる思いが募るばかりでした。それでも恋い焦がれている早良が青嵐会に入部していたため、仕方なく「オニ語」と「オニダンス」を覚えていったのです。
 「オニ語」と「オニダンス」が誠に珍妙で、笑えます。しかも荒川良々が演じる菅原会長は、一見お惚けつつも大まじめに「オニ語」と「オニダンス」をコーチするところが、余計に可笑しかったです。
 古式に則った“ホルモー”を行じるためには、男子部員のみ神前で厳かなる儀式を行うことが習わしでした。何故女子禁制か。差別かと思ったら儀式の終わりには、これまた珍妙な唄とダンスで雄叫びを上げて、なんとフリチンで踊ってしまうではありませんか。なるほどこれでは、女子禁制です。でも女性が主将を務める龍谷大学フェニックス会の場合はどうするんだろうねぇ。

 儀式のあと、新入部員達も「オニ」たちが見えるようになります。安倍が早良に失恋したことで退部を申し出ても、「オニ」たちがストーカーのようにつきまとい、退部を阻止してしまいます。どうもいったん儀式を終えてしまうと、退部は難しいようです。

 そしてストーリーは、京都の東西南北を代表する4大学対抗のホルモー合戦へ。相撲と同じく神様が絡んでいる競技のため、敗北には潔さが必要です。もしも、往生際悪く勝負に執着するとトンデモない天罰が下るのです。
 どんな天罰が敗北者に与えられたのか、惨めに負けた安部の親友高村の変わり果てた姿をぜひ劇場で、死なない程度に大笑いしてやってください。ありゃあ、どう見てもバカ殿なんだなぁ~。

 さて、安倍のチームメイトには、大木ボンド似の理工学部で無口なメガネ女楠木ふみがいました。演じている栗山千明はモデル出身の美人なのに、無愛想なブスになりきっております。←可愛そうに。安部にとって、チームのライバル斉藤の回し者かと思うくらいウザイ存在でした。しかし、斉藤とチームで分裂して戦い合う「17条ホルモー」を挙行したとき、安倍側についた彼女の意外な行動で危機を救われます。
 楠木の抱いていた意外な真意と髪を落としたときの変身ぶりにもご注目ください。

 今回は、京都4大学の対抗でしたが、続編は日本全国やアジア全域の対抗ホルモーがみたいです。その時は安倍のスーパープレイが期待できそう~。
 それにしても、この映画を見ると「オニ語」に病みつきになりそうです。今夜もひとり布団にくるまって、ゲロンチョリー~。

流山の小地蔵