ロックンローラ : 映画評論・批評
2009年2月10日更新
2009年2月21日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー
ロンドン裏社会に戻って息を吹き返したガイ・リッチーによる犯罪群像劇
マドンナの呪縛が解けたのか、ガイ・リッチーが古巣であるロンドンの裏社会に戻って息を吹き返した。不動産界を牛耳る闇のボス、彼に嵌められて借金を作ってしまったチンピラ、ロンドン進出を企てるロシアン・マフィア、そして彼に雇われた女会計士。欲に駆られた人間たちの思惑がすれ違いぶつかり合って、誰が勝ち組なのか先の読めない危ない話がアップテンポで展開する。この道具立てとスタイルは、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」とほぼ同じ。その意味では新鮮味に欠けるが、得意分野で張り切っているリッチーのエネルギーがどのキャラクターにも注入されて、前作より洗練された笑いを生み出した。
今回彼がキャラクターを動かすエンジンに使ったのはロシアン・マフィアが所有する一枚の絵画。大金の入ったバッグなどという直接的な欲望の対象ではなく、どんな価値があるのか分からない絵にしたことで、人間たちのリアクションがより高度な笑いに転化しているのだ。しかもこの絵は一度も画面に登場しない。キャラクターを動かす重要な要素だが観客にはそれが何なのか知らされないという、ヒッチコックが編み出した手法“マクガフィン”になっているのが最高にお洒落だ。ちょっぴりマヌケなジェラルド・バトラーも可愛いし、「ワールド・オブ・ライズ」のハニ役がカッコ良かったマーク・ストロングがまたまたクールな役どころで痺れる。
(森山京子)