「生活が描かれていない。」ベンジャミン・バトン 数奇な人生 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
生活が描かれていない。
どこで、どんなふうに働いて、生活していたのか。
唐突に、ある年代のある場面だけを見せられる。
養母クイニーに育てられ、青年期になり自立して船乗りになり、従軍して…。時折、故郷に帰り?
と、一か所にとどまらずに居場所・職を転々としているように見える。
だとしたら、さまようのはなぜか。
普通の人とは違う自分。
『ポーの一族』のエドガーが年をとらない自分を周りに悟らせないようにしたように、一か所に落ち着けないのかと、鑑賞直後はその運命に涙した。
けれど、彼には、彼の特性を知っても受け入れてくれる居場所があった。
そこで暮らせば?なぜ?離れる?
職場とした船長や仲間は感づいていたように私には見える。
なのに、その仲間とも別れて帰郷し、再び故郷を離れて別の働き口を見つけに言ったように見える。
ずっと一緒に働けばいいじゃないと思うのに。”仲間”に思えない?
妻とのやりとりも切ない。
●●になる勇気が持てない。一見思いやりに満ちた言動だけれど、妻の気持ちは考えていない。
存在してくれるだけで心強いことがある。『トトロ』のさつきとメイのお母さんだって入院していて子どもたちの世話はできないし、世話される方だけれど、家族の話を聞くだけでも母・妻としての役目を果たしている。子どもなんて意外に、心の繋がっていない世話よりも、多少行き届かない世話であっても心の繋がりの方が大切ってわかっている。
妻だって「~してくれない」族もいるけれど、このデイジーは老人の体に子どもの心を見つけた女性。子どもの体に父・夫の心を見つけられる女性だと思うのだけれどな。
マージナルマン。
一つの文化・社会にコミットできない・しない。
「自分は~というものである」という規定ができずに、境界線にたたずんで、どこかに根付くことをあきらめて(回避して)いるように見える。
私から見れば、ベンジャミンを理解して一緒にやっていこうとしていた人に囲まれていたように思う。だのに、なぜその手を自ら振り払う?
このあたりの葛藤がぼやけて掘り下げていないので、ただ雰囲気だけの演出(特殊な運命だからと簡単に片づけたよう)に見えてしらけてしまう。
ベンジャミンとデイジーの運命の恋が描きたかったんだったら、余計な描写はいらないから、もっと幼いころからの二人の付き合いを丁寧に描いて欲しかった。
日々二人の時間を積み重ねていたら別の想いも生まれただろうに。ちゃんと積み重ねられた時間は意外に強いと思う(積み重ねずにいた共同生活は、定年離婚を生みますが)。
今ひとつ話にのめり込めなかった。
こんな特異な設定にしてまで描きたかったことが私には掴めなかった。
特殊メイクとCGを駆使した人物造形が話題になった作品。そのお金のかかった場面を見せることに重きを置いた作品にしか見えない。
ただ、ケイトさんの後ろ姿に妙に感動してしまった。
20代のバレリーナと、40・50代の後ろ姿が違う。単に肉付きの問題ではなく、背中の丸めかた、後ろ姿の足の形が違う。
そこだけが、見どころ。
(原作未読)
僕は全く感動しませんでしたが、貴殿のお気持ちは共感できます。
さぁー仕事だ。ファンタジーなストーリー鑑賞しても、働かないと生活出来ませんからね。個人的には長生きしたいと思いますが。若返りたいとは思った事は一度も無いですね。過去に戻りたいと思った事もありませんね。自分の人生の選択間違っていたとは思いません。