最後の初恋 : 映画評論・批評
2008年9月24日更新
2008年9月27日よりサロンパス・ルーブル丸の内ほかにてロードショー
文句のある人は帰りなさいと言わんばかりの確信に満ちた展開
波打ち際スレスレに建っている古い小さなホテルがクセ者。その佇まいは魔法使いの家そのもので、一歩足を踏み入れるとたちまち非現実的な時間に巻き込まれてしまう、ような気になる。ここにたった1人、ワケありの宿泊客が現れ、オーナーから留守番を頼まれたワケありの女がもてなす。しかも外は嵐。閉じこめられた2人が身の上話を始めたら、もう恋に落ちるっきゃないでしょう! 文句のある人は帰りなさいと言わんばかりの確信に満ちた展開、2人の過去話と現在の苦悩もあきれるほど手際良くインサートされ、熟年恋愛の状況描写に手抜かりはない。
主演はリチャード・ギアとダイアン・レインの絵になる2人。ラブシーンもほどほどに美しく、「最後の初恋」の看板に偽りはないのだけど、何故か、恋する切なさが盛り上がらない。2人があまりにベタに恋のコースを進むので、見ているほうは置いてけぼりを食った感じだ。むしろ、ギアの苦悩に絡んで登場する地元の男スコット・グレン(老けた!)が語る妻への愛がしみじみと胸に染みた。舞台はノースカロライナ州の観光地アウターバンクス。防波堤のような細長い島々が130キロも続く海の中道で、素晴らしく美しい。探したら、くだんの魔法使いハウスのようなホテルがあるかもしれない。
(森山京子)