劇場公開日 2010年11月19日

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「僕はもうホグワーツには戻らない。戦争を前に、三人の旅が始まる。」ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1 NandSさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5僕はもうホグワーツには戻らない。戦争を前に、三人の旅が始まる。

2024年2月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

寝られる

前提として
・原作は未読。
・『ハリーポッター』シリーズは『~と謎のプリンス』まで視聴済。
・デビッド・イェーツ監督の他作品は『~と不死鳥の騎士団』と『~と謎のプリンス』を視聴済。

前半は「おお!」となるものの、後半からはどうにも盛り上がりに欠ける。

まず前半。ついに「戦争が始まった!」という空気感が素晴らしい。魔法族だけでなくマグルまで集団疎開していく。
最重要人物であるハリーの移動にも、護衛と決死の作戦がつく。さらっと流されたけど、ヘドウィグには泣いた。

そこから先は色々と騒動が続き、分霊箱探しになる。この間に何悶着か起きたり、謎と謎を繋ぎ合わせるターンになるのだが、今まで以上に手探り間のある時間が続く。
"手探り"といっても演出とか描き方というよりも、物語の中でのハリー達の動向の話。暗さとか雰囲気は変わらないのでご安心を。

さて、後半。
三人の逃避行に、仲間割れ(特にロン。)が挟まりつつ、視覚的な激しさは無くなっていく。終盤にかけてひと悶着あるものの、そこからまた落ち着きがち。
PART1だからしょうがないとは言え、物足りなかった。
PART2への盛り上がりがあるわけでもなく、焦燥感をあおられるわけでもない。ただひたすら、パズルのピースだけ追加していくような感じ。フレームに一切はめ込んでいないのだ。
ダレると言われてもしょうがないと思う。

キャラクター描写について。相変わらず良い。逃避行中は外の世界が見えないので、自然と三人組の感情描写と関係性に焦点が合う。

まずはハリー。頼りたい指導者が居ない中、手探りで旅を続けていく。彼としては友達や仲間を誰一人として犠牲にしたくはないのだが、その思いとは裏腹に一人、また一人と犠牲になってしまう。さらには常にヴォルデモートの声が聞こえている状態。なかなかにキツイ。
二人には弱いところを見せまいとし続けるが、思い出や両親の墓などに隠れて縋っている様子がまだ一人の青年であることを想起させる。
次作で全てから解放される様子を観たい。
余談だが、"七人のポッター"はダニエル・ラドクリフの面白い部分が出ているのでかなり好き。

次にロン。前作のラストで二人から一歩離れて立っていたところに違和感があったが、しっかりと回収されている。
要は決心がついていないのだ。家族を助けたいから戦争に行く一人の青年。もちろんハーマイオニーのこともある。だが、二人ほどの覚悟はない。
仲間割れを引き起こしてから、戻ってきた瞬間のイベントは必見。障害を乗り越えたわけではないものの、それでも二人のところに戻る決心をつけた彼の心情に拍手したい。
次作で戦争とは関係ない世界に居る彼を観たい。あと、ハーマイオニーと暮らしている様子とか。ハーマイオニーを大事にしろよ?

そしてハーマイオニー。一番活躍してるかも。細かなサポート面はお手の物。それどころか命の危機を何度も助けてくれる。強くない??
でもやっぱりロンに激情をぶつけまくってる彼女が愛おしい。ロンがケガをした時の焦りようと、ロンが離反したあとの落ち込みようと、帰ってきたロンにキレる様子と、弁明するロン(名演説)に慈しみの視線を送る様子。全てが素晴らしい。能力とか活躍はピカイチだが、こういったところをみると彼女も一人の青年であることを思い出させる。
次作でロンと暮らしている様子が観たい。

この三人のキャラクター描写はピカイチだと思う。『~と謎のプリンス』での描写が、このためにあったのならすごく納得がいく。
しかし良くも悪くも周りの状況があまり描かれないので、他の生徒たちの状況も観られない。ネビルとかもっと観たかったよ? ドラコは両親との会話が観られるので満足。

そういえばルーナの父親も出てくるのだが、彼がすごく良かった。
最初の"ちょっとズレてるお父さん"が"憔悴しきった、娘を守りたいだけのお父さん"に急変してしまった様子が痛ましい。
こういった、戦争被害者が描かれるのはかなり好印象。ヴォルデモート勢への怒りにもつながる。

前回よりも目的が分かりやすく、そういった面ではついていきやすかった。
見どころはいくつか(ポリジュース薬など)あるが、それよりかは要素要素をつなげたり、準備する物語なので、次作が今作の面白さを決めると言っても過言ではないと思う。
それだけ次作に投げたものが多いということだ。どうなるかな、最終作。

三人組の行く末を見守りたくなった。そんな作品。

NandS