劇場公開日 2008年7月5日

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「連合赤軍も靖国も公開された年における原田眞人監督の総括」クライマーズ・ハイ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0連合赤軍も靖国も公開された年における原田眞人監督の総括

2020年6月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 “連赤の恐竜(でしたっけ?)”なんて表現もありましたが、スクープによってスター記者になった過去の栄光や、事件が群馬で起こったことに歓喜する新聞記者たちの姿が面白かった。なんだか『突入せよ!あさま山荘事件』を撮った原田監督を自虐的に描いているような気がしてならなかったし、古い体質と新興勢力との対立だとか、上下関係、ザイルで繋がった社内連携プレイなど、社会の縮図だな~などと感慨深いところも多かったです。

 ほとんどが架空の新聞社である北関東新聞からの視点ではあるけど、多角的なとらえ方をしているし、庶民には日頃知り得ない新聞記者の実像にも迫ってくれたおかげで物語にのめり込むことができました。彼らの真摯な態度には賛美しているかのようでもあり、スクープ合戦をどことなく批判的に描いているようでもあり、偏ってないところもいい。中曽根と福田を均等に扱ったというエピソードもその表れなのかも。

 気になったのは、自衛隊の美談をトップには載せない方針だったのに中曽根総理が靖国公式参拝することには否定的でないという曖昧さ。公正中立な立場と地元意識は相容れないものなのでしょうか。また、主人公悠木(堤真一)の出生の秘密や社長(山崎努)のセクハラ問題などが活かしきれてないような気がしました。

 80年代というと、片桐機長の逆噴射とか、大韓航空機撃墜事件とか、そしてこの映画に登場する御巣鷹山日航機墜落事故と、印象に残る飛行機事故が多かった。原因究明のスクープがクライマックスになっているけど、23年経った現在でもはっきりしない。消防団の一人が「もっと早く来ていれば20人くらい助けられたのに」と語った台詞が忘れられなくなりそうだ・・・

【2008年7月映画館にて】

kossy