「宮崎あおいがかわいすぎる。」少年メリケンサック this.coさんの映画レビュー(感想・評価)
宮崎あおいがかわいすぎる。
宮藤官九郎監督作品。大手ミュージックレーベルで働く主人公のカンナ(宮崎あおい)はパンクバンド少年メリケンサックを発掘する事によって、契約解消の危機を回避する。しかし、少年メリケンサックは25年前に解散したバンドであることを知る。早とちりしたレーベルの社長(ユースケ・サンタマリア)はそれを知らずに、少年メリケンサックの25年前の動画をHPにアップ、大反響を起こしてしまう。さらに全国ツアーの予定まで組んでしまう。引くに引けずに再結成させた中年オヤジどもによる少年メリケンサックのパフォーマンスはボロボロであった。
ベース担当、秋夫(佐藤浩市)、弟でギターの春男(木村祐一)、ボーカルのジミー(田口トモロヲ)、ドラムのヤング(グループ魂・三宅 弘城)による少年メリケンサックの全国ツアー(強行された)を中心に25年前のメリケンサック結成、秋夫、春夫兄弟の確執などを通してストーリーが展開される。
宮藤官九郎ならではの小ネタが満載で、内容もわかりやすく飽きさせない、内容はパンクだが映画として誰もが楽しめるポップな作品である。
バンドはセックス・ピストルズを意識したものとなっており、作中では明らかにピストルズの代表曲であるGod Save the Queenをオマージュンしたであろう楽曲が使用されている。
また、作中では最近のいわゆる草食系バンドGOA(SAKEROCK演じる)や、「赤裸々に胸の内をさらけ出す系」の音楽プレイヤー(カンナのカレシ、まーくん)が、年を食ったメリケンサックメンバーのオヤジたち、あるいは主題であるパンクミュージックじたいを相対的に際立てる存在として揶揄されつつ登場する。
この揶揄がこの映画のひとつの見応えというか痛快さにつながっているかと思う。
登場する楽曲もそれぞれのジャンルの気持ち悪い部分を的確に凝縮していて見どころのひとつである。
とくにGOAの「曖昧模様!」には笑いを通り越して鳥肌がたってしまった。
気になったのはカンナ演じる宮崎あおいである。彼女は作中、話す相手ごとに態度を変える。カレシにたいするデレデレも、レーベル社長に対するコミカルな演技も、メリケンサックメンバーに対する雑な対応も、その全てがかわいいくて実はこの映画、彼女の演技を見るだけでもお腹いっぱいになることができる。しかし、先程も言ったようにこの映画の一種の魅力は揶揄にあって、カンナも揶揄される対象として描かれているはずなのである。しかし、彼女がかわいすぎて、揶揄が揶揄になりきらない、ネタがネタになりきらないのである。
本当はもうちょっと冴えない役者にやらせたほうが、痛快さは一層増すのだろう。
最終的にはでもまあいいか、と思ってしまうくらいかわいいのである。
びっくりである。