「あり得ない話の連続。そんな下手なストーリーに延々付き合わされてうんざりしました。」少年メリケンサック 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
あり得ない話の連続。そんな下手なストーリーに延々付き合わされてうんざりしました。
だいたいメジャーレコード会社の社長が、リストラ間際の契約社員に社運をかけたバンド発掘の全権を任せること自体があり得ない話。そんな下手なストーリーに延々付き合わされてうんざりしました。
この元パンクロックのメンバーだった社長、契約社員見たというネットの映像を見ただけで、興奮してしまい、ろくにリサーチもかけず、現場のかんなの報告も聞かずに先走り、バンドの現状も知らないまま、全国ツアーまで決めてしまうのは異常です。
後半のストーリーと挿入される関係者のインタビュー映像から、SMSは、結構名前の知られたパンクバンドだったようです。だからネット時代の今日、少し調べれば、活躍時期やメンバーの年齢なんか50歳のオジンになっていることなんて会社でもすぐ調べがついたはずです。
それをパンクバンドをやっていた50歳のオジンが年齢を間違えられるというアクシデント元で復活、活躍するというストーリーに監督は酔ってしまって、完全にリアルティーを無視。ベタな展開をごり押ししたのだと思います。
かんなの彼氏もヘンでした。
かんながなんで悩んでいるのか全く聞こうとせず、うまくいくよと脳天気に慰めるばかりです。そんな状況じゃないのに、彼氏あま~い慰めの言葉だけで、元気になってしまうかんなもヘンでしたね。ふたりで勝手にやってろ~の世界です。
かんなが苦悩するのも無理はありません。社長に一方的に押しつけられた少年メリケンサックは、オヤジバンドにもなっていないほどの体たらく。ボーカルのジミーなんか、ある事件がきっかけで半身不随。声すらろくに出せないほど。他のメンバーも、体力はないし音は冴えないし、スタジオでの初めての音あわせでは、悲惨の一言。こんなのただのおっさんじゃないの!とグループを担当することになったかんなの怒りはいくばかりのことだったでしょうか。
まぁ、ピンチになったら泣きをだすことと一目散にトンズラするという特技を発揮するかんなというキャラは、愛嬌たっぷりで気に入りました。コメディアンヌとしての宮崎あおいもいいですね。
元々クロカンの作品は好きではなかったのですが、食わず嫌いも何だし、宮崎あおいは好きだったから試写会に足を運んだ次第です。
初めてクロカンの作品に触れて、率直にこれはクドカンだぁ~と思いました。
けれどもそこは演技達者な、佐藤浩一のことだけはあります。どうするのよと食い下がるかんなに食い下がる佐藤が演じるアキオが、一発セリフを決めれば、こんな荒唐無稽な状況でも、こいつらばしっと決めてくれるのではないかと予感させる空気を作るのです。 佐藤浩一がオジサンパンクロッカーに大変身してしまったのは、『誰も守れない』を見たあとだけに、余りのイメージギャップ!驚天動地の極みに思えましたぞ~。
本作は、オジンバンドが奇跡の復活を遂げるというのがメインであるはずです。なのに、いつの間にかジミーも体動けるようになり、人気バンドになってしまう展開に。そりゃあないだろうと思いましたよ。どうも監督は、因縁深いアキオとハルオの確執に話を持って行きたかったようです。
ラストもそんなオチなの?という感じです。これでは、同じパンクを扱った『デトロイト・メタル・シティ』の方が、遙かに面白いでしょう。DMCファンはどう思われましたか?