少年メリケンサック : インタビュー
宮崎あおい主演、宮藤官九郎監督・脚本で、レコード会社勤務のダメOLとオッサンパンクバンドの珍道中を描く「少年メリケンサック」。劇中で、中年パンクバンド“少年メリケンサック”のボーカル、ジミーを演じた田口トモロヲ、同じくドラムのヤングに扮した三宅弘城、そして怪しさ満点の事務所社長・金子を演じたピエール瀧に話を聞いた。(取材・文:編集部)
田口トモロヲ、三宅弘城、ピエール瀧 インタビュー
「パンクは“青春”という病気を再発させたようなもの」(田口トモロヲ)
「宮藤監督には現場でいきなり『パンツ脱いで』と言われた(笑)」(三宅弘城)
「80年代当時は怪しい事務所のオッサンがたくさんいた」(ピエール瀧)
――「少年メリケンサック」のように、40~50代の中年男性がパンクバンドを結成することについてどう思いますか?
田口「バンドの醍醐味って、たとえ間が途切れてもいろんなことが合致したときに再集結してやれることだと思うんです。それは最初に患った“青春”という病気を再発させたようなもので、この病は治らないじゃないですか。パンクやロックってそういうことだと思うんです。ちなみに、ピエールさんは『電気グルーヴ』をずっと継続してやってますよね。その前身で『人生』というバンドもやってたから、本当にバンド三昧だったよね」
ピエール「そうですね。ずっとテキトーなことばかりやってました(笑)。バンドを続けながら制作会社でアルバイトをやってたこともありました」
――ジミー役の田口さんとヤング役の三宅さんは、バンドメンバーとして長期間一緒に撮影してお互いにどんな印象を持ちましたか?
田口「彼のことは17~18年前から知ってるんですが、相変わらずバカだな~と羨ましくなりました(笑)。たとえば、木村(祐一)さんや(佐藤)浩市さんと楽屋にいるとき、彼らは大人としての距離感を保っていたんですが、三宅君はいきなり『木村さん、最近のお笑いはどうですか?』とか、『浩市さん、競馬のCMに出てるからやっぱり馬肉は食わないんですか?』とか聞いたりして、平気で土足で踏み込んでくる。そうやって年上のおじさんたちの心を踏み荒らす感じが逆に良くて、彼が接着剤になって皆が仲良くなれたんだと思います。おバカなムードメーカーでしたね」
三宅「良い感じでまとめてくれたと思ったら“バカ”が入るんですね(笑)」
田口「KYの元祖みたいな人ですからね」
三宅「トモロヲさんとは昔から面識はありましたが、一緒にお仕事させていただくのは初めてだったんです。昔は会う度にイジメられていた気がするんですが(笑)、久しぶりに会ったら優しくなったなという印象を受けました。でもやっぱり慣れてくると、ちょこちょこ意地悪されるんですよ。そういう昔のトモロヲさんが出てくると、なんだか懐かしくなりました」
――25年前の「少年メリケンサック」結成の仕掛け人であり、現在は事務所社長の金子役を演じたピエールさんですが、大げさなくらい悪人面でしたね。
ピエール「昔はああいう人が結構いたんですよ。80年代当時、僕とトモロヲさんはナゴムレコードというインディーズレーベルでそれぞれバンドを組んでたんですけど、あの頃は怪しい事務所のオッサンがたくさんいましたから。監督からも『とにかく胡散臭い感じで』と言われました」
――主演の宮崎さんは宮藤監督から「ネズミのような顔をして」などかなり変わった演出をつけられたそうですが、監督の演出で印象に残ってることはありますか?
三宅「僕は監督から現場でいきなり『パンツ脱いで』と言われたことですね(笑)」
田口「うーん。とにかく監督が一番楽しんでいたっていうのはありますね。だから監督が笑っていれば『今のテイクは良かったんだな』と思ったし、逆に笑っていないときは『イマイチだったんだな』と解釈してこちらも演じていました」
――ちなみに監督が一番ウケていたシーンは?
三宅「ジミーさんが車椅子で登場するシーンはかなり笑ってましたよね」
田口「途中で車椅子が段差に引っかかって、無理矢理ヨイショーッと持ち上げると僕の首がグワンとグラつく、というシーンをものすごく楽しそうに演出してましたね(笑)」
――ヒロインかんなは「パンクなんて大嫌い」と言っていますが、今の若い女の子にパンクの魅力を伝えるとしたら?
ピエール「僕はむしろ今の若い子たちのファッション自体がかなりパンクだと思いますけどね」
田口「パンクは誰にでもある心の底の衝動だから、要は心に火が点くか点かないかだと思うので、この映画をきっかけに観客の心にも火が点けば嬉しいです。さらに、これを機に女子はパンクスと付き合わないとカッコ悪い、みたいなことになればいいですよね」
ピエール「パンクスと付き合ってる女の子ってそそりますよね(笑)」
田口「でも初期はひどいもんだったよ。ひどい歴史だよ(笑)」
ピエール「確かにひどかった! おかしなラバーソールの靴を履いたフナみたいな顔した女の子たちがたくさんいましたからね(笑)」
田口「シジミみたいな女の子ばかりだったよね(笑)。そういう歴史があって、だんだんクオリティが上がってきたんですよ」
三宅「AVの歴史と一緒ですね」
一同「(爆笑)」