「【追加あり】純真なトニーに共感。決してプロパガンダではなかったですよ。」アイアンマン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
【追加あり】純真なトニーに共感。決してプロパガンダではなかったですよ。
『ハルク』といい、この『アイアンマン』といいマーベルスタジオが送り出したオリジナルヒーローシリーズは、レベルの高い仕上がりだと思いました。
超人ヒーローものは、何でも可能にする能力があるだけに、ちょっとしたオーバーな表現で、リアルティが損なわれます。『ハンコック』の後半部分がいい例でしょう。
『アイアンマン』は『ハルク』で魅せたラブストーリーや人間ドラマでは弱いです。でも主人公を兵器産業のトップに置き自己反省させることで、「死の商人のプロパガンダ作品」という批判をかわせるようなシナリオに仕上がったことが評価できます。
『24』シリーズを始め、ハリウッドのエンタ作品で敵役の定番と言えば、もっぱら近年では中東のテロリストが相場でした。ところが本作では、主人公トニーが経営する会社がトップであるトニーを抹殺しようし、真の敵役となる点が違っています。
その訳は、トニーの部下たちトップに無断で、テロリストたちに自社の武器が横流ししていたのです。それを知ったトニーはショックを受け、軍需産業からの撤退を表明したため部下から命を狙われるような事態になっていったのです。
テロ撲滅を宣言直前にトニーは自らに問いかけます。
「生き残った、何のため?」
その台詞にすごく共感出来ました。そして、自らの新しいミッションを語るときの澄んだトニーの瞳。それがキラキラと輝きながら語る口調は、父親が残した軍事産業に疑問を持ち、本心で平和のための戦いを誓う気持ちがこもっていました。
本作にプロパガンダ臭さがなかったのは、トニーに自己批判させたシナリオの巧みさとトニーを演じるロバート・ダウニー・JRが、彼の純真さをストレートに押し出した演技に寄るところが大きいと思います。
またヒーロー誕生の見せ方でもこの作品は変わっています。
変身もせず超能力も持たないトニーは、自らの手でパワードスーツを開発していきます。他のヒーローものと違っているところは、自らがパワードスーツを開発し、試作段階から、開発途中の試行錯誤、そして装着シーンまで克明に描いているところです。作品自体がネタバレになっていました。その辺がバットマンと違うところでしょう。
開発中の実験を重ねるシーンでは、あちこち体をぶつけたりするところがリアルです。また初めて浮遊するシーンでは、見ている小地蔵も思わず浮いているような錯覚に包まれました。
装着シーンでは細かいメカニカルなところを見せており、メカ好きな人にはたまらないシーンとなることでしょう。
パワードスーツ装着時のリアルな動きは、この作品の一番のウリで、自分があたかも装着しているかのような気持ちにさせてくれるものでした。
そしてマーベル作品でお約束のヒーロー、ボスキャラ対決はこの作品でも健在で、ハルク同様パワードスーツ同士の激しい対決が見れます。これはかなりの迫力でした。
ところで、皆さん気にしていた本作のエンドロール後で、登場するニック・フューリーなる人物は、アメリカの秘密組織 S.H.I.E.L.D. の長官で、超人の関わる事件に数多く対処している、眼帯と葉巻がトレードマークな渋い男。
その彼が指揮することになる『アベンジャーズ』とは、それぞれ違う能力を持ったヒーローたちが協力して戦う集団。ファンタスティック・フォーやミュータント限定のX-メンとは異なり、ヒーローであること以外参加条件がほとんどありません。
ニックは、アイアンマンのスカウトを皮切りに、ソーやハルクなどの超人を加入させ、アベンジャーズ計画を完成させていくことでしょう。
一連の自社キャラクターのマーベックススタジオ製作一本化により、『アベンジャーズ』を冠したスーパーヒーロー軍団の作品がおそらく数年以内に登場するものと思われます。
話は違って、原作者スタン・リーは本作ではどこでカメオ出演しているのでしょうか。ちょっと気がつきませんでした。
追伸
ローズ少佐を演じたテレンス・ハワードは本作も好演してますね。彼が出ていると、画面が締まり、嘘くさくなくなります。『ブレイブ・ワン』以来注目しています。