「医療監修が貧弱」感染列島 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
医療監修が貧弱
ゾンビウィルスは外すとしてウィルス感染の恐怖を描いた映画は「アウトブレーク(1995)」、本作(2008)、「コンテイジョン(2011)」の流れ、アウトブレークは細菌兵器がらみのサスペンスだから普通に起こりうるパンデミックを描いたのは本作、ただ余りに非科学的な感傷ドラマに走りすぎたので医療監修に本腰を入れてリアリティを増したのが「コンテイジョン」であろう。
本作も随分前に観てカンニング竹山の違和感だけは覚えていた程度の印象だったが昨今のコロナウィルス騒動で「コンテイジョン」を観なおしたきっかけでまた観てみました。
脅威を示すための患者の死は避けては通れませんが登場人物に感情移入させておいて死なせてゆく作りは観るに堪えず限界を感じます、幼い娘まで登場させて母の看護師を死なせるプロットはお涙頂戴の極みでしょう、檀れいを突き飛ばした報いでしょうか・・。
そんな限界を感じて「コンテイジョン」のソダーバーグ監督はドキュメンタリータッチの演出に寄せたのでしょう。それにしても本作のプロットは酷過ぎる。
先ず、ミナス島から帰省した感染源を医師に設定した意味が理解に苦しむ、高潔な海外難病救済の医師の端くれならどれほど危険なことか自覚があってしかるべきだろう。それをまた娘が隠すのも頂けない、血清は贖罪とでも言いたいのか。
感染源の調査に市民病院の一介の医師や獣医学者が出向くのかも不自然、国はいったい何をしているのか、国家の体をなしていない。
症状から見ればエボラだろう、素人目でもインフルエンザの類と違うことは一目瞭然、画として迫力が欲しかったとしか思えない。主役で美人だから致し方ないが檀れいだけは綺麗な死にざまだったのも不自然。
SFで既存の権威が役立たず、異端の学者が活躍するのはお約束としてもなぜお笑いタレントが世界を救う最重要な役なのか、奇をてらい過ぎだろう。
未知のウィルス相手にBSL(バイオセーフティーレベル)設定もいい加減だし防備がゴーグルとマスクだけというのも安易すぎる。ことほど左様に突っ込みどころ満載だが路線を日常性に変えた意味では貢献したのかもしれない一作でした。