「若い人ほど本作を観て、団塊左翼老人たちに騙されて、山岳ベースに連れて行かれないようにするべきだ 「連合赤軍」は精神の中にいまも存在して、あなたを狙っているのだ」実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
若い人ほど本作を観て、団塊左翼老人たちに騙されて、山岳ベースに連れて行かれないようにするべきだ 「連合赤軍」は精神の中にいまも存在して、あなたを狙っているのだ
これほど胸糞悪い映画は久しぶりだ
「冷たい熱帯魚」と同じくらいに胸糞が悪い
そんな映画を観ようと思ったのは訳がある
1ヵ月ほど前、こんな記事を読んだからだ
「手紙で「出所後は謝罪と闘病」 5月刑期満了の重信房子受刑者」
あの日本赤軍の重信房子がもうすぐ5月28日に出所するというのだ
2000年に大阪府高槻市で逮捕されて、もう22年も経ったのだ
彼女は本作の劇中前半に重要人物として序盤直ぐから登場する
21歳とテロップにでる黒髪ロングの綺麗な女性が、今では76歳の老婆になり果てて出所してくるのだ
出所後は彼女に本作をまず観て欲しいと思う
そしてその感想を公表して欲しいものだ
山荘ベース事件やあさま山荘事件そのものは、彼女とは直接関係はない
しかし関わりは濃厚にあるのだ
そして、この当時学生運動に関わって活動していた団塊左翼老人たち全員にも関わりがあるのだ
関係ないなんて言わせない
連合赤軍のこと、あさま山荘のこと、重信房子のこと
そんなこともう半世紀も昔のことだ
21世紀の現代になんの関係もない
ならば同時代に生きて、同じ様な左翼活動をした団塊左翼老人たちが、若き青春の日々を回顧する為の映画なのだろうか?
太平洋戦争の戦記映画のような当時を回顧する映画なのだろうか?
それならば21世紀生まれの若い人に、本作を観る意義や意味や価値などないのだろうか?
いや今こそ21世紀生まれのように若い人こそ本作を観るべきだと思う
タイトルにあるように本作の終盤は、あさま山荘の立てこもり事件となる
1972年2月下旬、軽井沢駅から南に8キロほど
河合楽器の保養所「あさま山荘」で起こった実際の事件
「突入せよ!あさま山荘事件」が徹底して体制側の視点だったから、連合赤軍側の視点で彼らの考え方や立場を、若松監督は伝えたかったことが製作意図という
しかし、本作には一切の美化も、正当化も、賛美も、擁護もない
実録そのものだ
そこは大いに好感が持てる
この事件から今年はちょうど50年
同じ2月下旬にロシアはウクライナに侵攻した
何の関係もないようで、何か同じことのように見えないだろうか?
ウクライナ戦争は、プーチンにとってのあさま山荘事件のように思えて仕方ないのだ
自らの凝り固まった思想信条が行き着いた先ということだ
本作の真のクライマックスは、あさま山荘の攻防では無い
その前に展開される山岳ベース事件だ
正視に耐えない
正に地獄
なんという陰湿さ、凄惨さ
肉体だけでなく精神をも破壊するリンチ
凝り固まり煮詰まって自家中毒となる思想と体制の恐ろしさが余すことなく表現されている
共産主義化達成の為だといえば全てが正当化される
一人一人の共産主義化が必要だといえば、人に対して何をしてもよいのだ
共産主義思想の行き着くこところの姿だ
本当に、こんな連中に日本が乗っ取られ支配されずに済んで良かったと心から思う
翻って、2022年5月9日のロシアの軍事パレードに、それと同じ狂気を感じるのだ
ウクライナ南部のロシア占領地の町には、巨大なレーニン像が建てられ、ソ連の赤旗が翻っているニュース映像もそうだ
「こんなの革命じゃないよな!自己批判しろ!」
という台詞が終盤に、立て込もり犯の口から飛び出る
その言葉をプーチンに投げかけたい
しかし、プーチンはそれを21世紀にやろうとしていると言うことだ
共産主義なんか抜け落ちて、あるのはただただ帝国主義とファシズムなのだ
しかしこのウクライナ戦争でのロシアの行動を正当化し、擁護する人々が、驚くことに一定数いるようなのだ
その精神の構造は、本作の登場人物と変わらない
「連合赤軍」の精神は今もあるのだ
若松孝二監督は、60 年安保闘争以前から、日本の左翼闘争の歴史を解き明かしてくれる
その当時、同時代にその現場に生きた人間ならではの生々しさが、自分のようなもっと下の世代にも伝わる
若松孝二監督は、1936年生まれ
60年安保世代だから、本作の登場人物達とは一世代上になる
しかし本作登場人物とも幾分かの関わりもあったようだ
農業高校中退後、職を転々として、あさま山荘事件のときは36歳、ピンク映画を撮りまくっていた
戦争宣言(特徴的なゲバ文字)
赤軍派結成
万国のプロレタリア団結せよ!
自己陶酔の言葉の数々
今となっては爆笑だ
永田洋子は序盤しばらくしてから登場する
酷薄、冷血、のっぺりとした白い顔、切れ長のキツい目つき、つり上がった細い眉
まさに彼女のそのもののイメージが映像で具象化されている
ラストのテロップでは収監中となっているが、
2011年2月5日に東京拘置所で脳萎縮、誤嚥性肺炎のため65歳で獄死している
あさま山荘事件の5人の犯人の一人、坂東国男は、この3年後、重信房子の日本赤軍がクアラルンプール事件を起こして奪還に成功、今も逃亡中
その重信房子が刑期満了で出所してくる
このニュースを団塊左翼老人たちはどのように聞いたのだろうか?
彼らはもう75歳前後
劇中にこんな台詞がある
「きちんと総括させて自己批判させなければ革命的な死にはならないぞ」
彼らの心の中で「総括」はできているのだろうか?
自己批判ができているのだろうか?
本作のように、「勇気がなかった」なんてことで、簡単に総括して欲しくない
そんなのは自己批判じゃない
言い訳だ
それとも、死ぬ前に一花咲かせようと、未だに半世紀も昔の考え方に若者を洗脳しようとしているかも知れない
だからこそ、若い人ほど本作を観て、団塊左翼老人たちに騙されて、山岳ベースに連れて行かれないようにするべきだ
「連合赤軍」は精神の中にいまも存在して、あなたを狙っているのだ
令和の殲滅戦なんか、絶対にごめんだ!
talisman さん
共感ありがとうございます
今年2022年は色々な節目ですね
1952年の主権回復から70年
連合赤軍事件から50年
1992年の地価下落のバブル崩壊から30年
歴史の歪みが溜まりにたまって解放されようとしている
そんな予感がします
共感しました。団塊左翼老人に見てもらいたい映画です。ファシズムに通じる危険性はどこから来たのか、来るのか、監視社会、粛清、リンチについて当時と現代を見比べて意見を聞きたいです。今の、歴史をまるで知らない、勉強していない政治家全員にも見て欲しい映画です。