「天才の脆さを描く芸術」ラフマニノフ ある愛の調べ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
天才の脆さを描く芸術
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総合:65点
ストーリー: 60
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 75
音楽: 80
孤独、怒り、絶望、不安、情熱。そのようなものが入り乱れて場面をかき乱し、美しい彼の音楽を奏でているときも過去を振り返るときも、常に緊張感が漂う。不幸な生い立ちもあって、彼には心休まるときが無い。何かに怯え、何かに怒り、何かに突っかかっていく。家庭環境と政治体制と音楽、そのようなものにいつも振り回され続ける、天才の脆い精神。映画を見るまで私は知らなかったが、交響曲第一番の失敗や精神をおかしくしたりというのは史実らしい。映画全体でどこまでが事実でどこまでが創作なのかわからないのだが、見ている側もまた心休まるときが無い。
物語は彼の経歴から恐らくあることないことを片っ端から詰め込んだというもので、神経質な彼の姿以外には一貫性はない。ひたすら苦悩している彼の姿が描かれ、そしてそれらを全て浄化してしまう「パガニーニの主題による狂詩曲」の登場。透明な旋律が長年の苦悩も何もかも洗い流していく。恐らくそれまでのことは全てこの場面のための伏線、そういう芸術的作品。
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