「たった一度、桜の下で」山桜 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
たった一度、桜の下で
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BS日テレ「日曜特選時代劇」で鑑賞。
原作は未読。
厳しい年貢の取り立てに、農民は日々の食事にも事欠き、命を落とす者まで出ている中、藩の上役は私腹を肥やして贅沢三昧し、己が欲望のためにさらに年貢を厳しく巻き上げようと画策する。
苦汁を舐めるのは常に下の者。このような理不尽は何も江戸時代に限らず、令和の今でも形を変えて存在していると云うことがなんだか悔しくてならない。あまりにもあまりある所業に上役を斬った東山紀之演じる武士の静かな怒りに共感した。
正しいことをしたが、手段が手段なだけに牢に繋がれてしまった彼を待ち続ける野江(田中麗奈)の姿がとても健気で涙を誘う。最後の最後に登場した富司純子の柔らかな存在感も、出番がわずかにも関わらず出色で、これが大女優の業かと感服した。
藤沢周平原作らしい豊潤な人間ドラマが味わえる時代劇の佳作である。たった一度の桜の下での交流がずっと心にあって、相手を想い続けるふたり。なんと美しい、人の心の在り様だろうと思った。
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