劇場公開日 2008年5月17日

「N・マンデラの勇敢で誇り高き看守」マンデラの名もなき看守 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5N・マンデラの勇敢で誇り高き看守

2022年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2007年(独/仏/ベルギー/南ア)ビレ・アウグスト監督・脚本
好きな映画でした。
長い年月(1968年から1992年)に渡る物語ですが、
ドラマティックで引き込まれました。

主人公の看守ジェイムズ・グレゴリーの手記を元にしています。
グレゴリーは手記なのに、辛い事実や自分に不利な証言も包み隠さずに書いているから、
歴史的にも価値のある映画の原作となったと思います。
ネルソン・マンデラさんは今では偉人のひとりです。
南アフリカ共和国の公民権活動家として27年間投獄されて、やがて釈放された。
その後1994年から1999年の5年間、南ア共和国の大統領を務めた。
(よくぞ黒人指導者が囚人から大統領に!!
と、思いました。南アの人口の80%は黒人で白人は10%にも満たないのです)
この人口比率も彼を大統領に押し上げたのですね、きっと)

ジェイムズ・グレゴリーはマンデラの話す黒人言語のソト語を話せる看守として、
マンデラの傍で27年殆どを過ごしましたが、黒人運動家の手紙の検閲やマンデラの元へ
面会に来たマンデラ夫人の傍で監視するのが仕事でした。
そこでソト語のやりとりを聞き、チクったことで妻は逮捕されます。
だから決して初めからマンデラの理解者だったわけではないのです。

手紙を検閲することで、1週間後に釈放される黒人活動家を待って企てられる抵抗運動を密告して、その活動家が爆死する・・・などを経験。
グレゴリーは自分の仕事の結果に慄然とするのでした。
ネルソン・マンデラが闘っていたのは南アの政策『アパルトヘイト』
アパルトヘイトとは白人と非白人を人種隔離するという非人間的政策のことです。
1948年から1994年まで続きました。

グレゴリーが看守としてマンデラ氏に接するうちに、彼の人柄に触れ影響されて、
自己を主張して、出世よりも大切なことを学びます。
彼は看守であることより、人間の自由や平等を考えるようになり、
上官にもはっきりものの言える人でした。。
妻(ダイアン・クルーガー)は最初から最後まで物欲主義者でしたが(笑)
夫のグレゴリーの最後には良き理解者となり、
「あなたは歴史の1ページに関わる大事な仕事をしている」
と、理解して、釈放されたマンデラに大きく歓声を挙げて手を振ります。

ジェイムズ・グレゴリーは、マンデラ氏の自伝にも名前が載り、大統領就任式にも
招待されました。
(なんとWikipediaにも彼のページがありますよ、凄い!)
「名もなき看守」・・・所ではありませんね。

琥珀糖