「ラストの伏線回収は実に見事」アフタースクール といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストの伏線回収は実に見事
YouTubeの映画紹介動画にて、「伏線回収が見事な作品」として複数の方が紹介していたため、伏線回収もの大好きな私としては観ないわけにはいかないと早速鑑賞いたしました。ちなみに。「伏線回収が見事」ということ以外は事前知識はありませんでした。
結論、凄かった!!
前情報の通り、映画終盤の伏線回収本当に見事でしたし、納得感のあるラストでした。伏線回収モノの宿命ではありますが中盤あたりまでは特に大きな展開もなく正直退屈です。しかし後半からは怒涛の伏線回収が始まるので面白くなってきます。「ラストまで注目して観ないといけない」という映画の特性が上手くハマった作品だったと思いますね。テレビドラマでやったらつまらなくて前半でチャンネル変える人が多そう。
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母校の中学校で教師を勤める神野(大泉洋)の元に、かつての同級生を名乗る怪しい探偵の北沢(佐々木蔵之介)が現れる。北沢は同じく同級生で神野の親友である木村(堺雅人)を探しているらしく、神野は彼の捜索を渋々ながら手伝うことになるのだが…。
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神野と北沢は行方不明になっている木村の行方を追って丸一日奔走するが、その中で少しずつ木村の行動が明らかになっていく。色々な人から話を聞いていくうちに事件の概要がおおよそ想像がついてくるんですが、映画の後半にそれまで考えていた事件の概要が覆される展開が待っています。
私、「一度判明した事件の真相が覆される」って構成のミステリ作品がめちゃくちゃ好きなんですよ。他の映画で言えば「サーチ」「白ゆき姫殺人事件」、小説で言えば西尾維新の「クビシメロマンチスト」、アニメで言えば「氷菓」の「万人の死角」という話もそういうパターンですね。この作品も前半の予想が後半で見事に覆される展開で、私の好みにハマりました。
キャスティングも素晴らしかったと思います。
大泉洋の「振り回されてそう」って感じとか、堺雅人の「人が良くて軽い印象」とか、佐々木蔵之介の「ほんのり漂う怪しさ」とか。登場するキャラクターと俳優のイメージがピッタリで素晴らしかったです。
堺雅人さんは「半沢直樹」の半沢直樹役や「リーガルハイ」の古美門役などで活躍されているので「強いキャラクター」を演じる機会が多いですが、個人的にはこういう「人の良さそうな気の弱いキャラ」の方が合っているように感じますね。伊坂幸太郎原作の映画「ゴールデンスランバー」もそんな感じのキャラでしたね。
ストーリーも中盤までは正直退屈ですが、後半からの怒涛の伏線回収は観ていて非常に気持ちのいいものでした。映画の前半では、神野と北沢が一日掛けて木村の足取りを追い、観客たちは「木村が何故失踪しているのか・何故木村が色んな人から追われているのか」がある程度予想できてきます。しかし後半になってその予想は覆されます。観客が思い描いていた予想は実は的外れで、実際には別の真実があったと分かるのです。
映画マニアとしても有名なライムスターのラッパー宇多丸さん曰く、「伏線というのは最初は作中きちんと役割を持って登場した設定や出来事が、後に別の役割を持っていたことが判明すること」だそうです。この作品に登場する伏線は観客を1つの予想へとミスリードする役割をしっかり持っている上で、更に後半に明かされる真実すらも補完するものになっていました。「伏線回収」の醍醐味をしっかり味わえる素晴らしい脚本だったと思います。
この作品、良くも悪くも「映画向き」な作品なんですよね。
映画って基本的には暗い映画館で観るものですので、否が応でも映画に集中せざるを得ないシチュエーションなんです。しかもテレビと違って「つまらないから別のチャンネル」とザッピングすることもできない。お金を払って観ているのだから途中で退出するのも勿体ないから、つまらない映画でも結局最後まで集中して観ることになります。
先にも述べましたが、この映画の前半は正直退屈です。だからこそレンタルDVDとかネット配信で観た人は途中でスマホいじったりして集中しなくなるとか、再生を止めてしまって観るのをやめる人もいるかもしれません。しかしこの映画、前半はつまらないのに前半にほとんどの伏線が隠れているので、「集中して観ないと面白くない」んです。だからこそ、本来は映画館で観るべき映画であり、自宅で観るのには正直あんまり適さないんじゃないかなーとも思います。実際他の方のレビュー見てみると「前半で飽きた」とか「我慢して観たら後半は良かった」みたいなレビュー多いですし。
これからこの映画を観る人は、絶対に最初からしっかり集中して観てください。これが、この映画を楽しむためのコツです。面白いのでお勧めです。