歩いても 歩いてものレビュー・感想・評価
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ビタースイートな家族の物語の前半
何気に予告編を見ていたら、傾斜地の住宅街、海岸線と赤い電車。これって京浜急行沿線では?と思い、見始めました。 多少、特異な家族歴があるものの、誰しもに経験のあるようなクスリと笑える出来事、チクリとくる出来事があり、自分自身の家族や両親の姿と重なる部分を見ておりました。もう一つ、あの二人、阿部寛さんと夏川結衣さんは、TVドラマ「結婚できない男」の二人でした。あたかも、あのドラマの延長かなと思える夫婦の雰囲気でした。
ラストの三年間は省略されていましたが、老親って、突然亡くなるのではなく、段々と亡くなるんですね。支える家族にとっては、ラストスパートの三年間であったはず。そこはどうでしたか? という後半の物語の第1章。そして無人となった家屋と土地。京浜急行沿線の住宅地は高齢化が進み、次世代への引き継ぎが進んでいるはず。しかし他所からくる若い家族は湘南を目指します。というわけで、その空き家と土地をどうするのか? という後半の物語の第2章もあります。旅立たれたお二人の御遺産として、不動産と現預金が同等であれば、さほどトラブルにはならないかもしれませんが、バランスが悪い場合とか等など、相撲取りの名前同様、くだらない話かもしれませんが、そんな想像をしてしまいました。じわっとくる映画です。
良い映画
自分の家族は”普通”なのか?
なんかTwitterで「意外と怖い映画」みたいな括りで紹介されてた作品。
なるほど、これはちょっと怖いです。いろんな意味で。
帰省で実家に戻ってきた3世代を描いている日常もの。
のようで、家族の意外な一面を見てしまったり、帰省あるあるといった苦い経験を切りだしています。
樹木希林さんは本当に幅の広い女優さんです。
温厚さと狂気性を持ち合わせていて本作品にはぴったり…
親にとって子供はずっと子供。
それは生きていてもこの世にいなくても一緒。
実家に帰った時の肩身の狭さだったり、血のつながっていない夫婦にも亀裂がはいるやもしれぬイベント、それが”帰省”ですね(笑)
離れていて気がつかなかったけど、年老いた両親にも”傷”はあって
それを目の当たりにしないといけない恥ずかしさとやるせなさ。
兄の命日に実家に帰省して過ごす1泊2日。 父と何かと衝突したり、母...
何だか観ていて嬉しい
家族の在り方をそのままに描かれた作品。
穏やかで、それでいて厳しい夏休みの帰省。
阿部ちゃんは相変わらずな感じで、さらに樹木希林とYOUというすごい濃い面子。
音楽はオープニングのギターから大好きで、作曲はゴンチチ。実にあってますね。
それとこの作品、ご飯が良く描かれているんです。
ジブリ作品のようと言えば良いでしょうか、観ていてとてもお腹が空きます。
それにしてもこの作品観てると、やっぱお嫁さんて大変だよなって思いますね。
そして親子だけがこじれてて、他のみんなはうまく回っているようなのも皮肉が効いてる。
よしお君に対する呪いの言葉もですが、嫁と姑のキリキリする感じとかまた嫌。
だけどまぁ、そうゆうもんなんでしょうね。
ここら辺をコメディなタッチでみせるのもうまい。
優しく光ある色使いで描き出す、ど真ん中の是枝作品ですね。
色々あって、それでもしっかり繋がっている。どこにでもある家族の姿がありました。
それでも、何だか観ていて嬉しい作品です。
お好きな音楽は?
家族を大事にしたくなる映画
日常の裏側
タイトルの所以
淡々と。
交差する会話劇の計算された台詞と丁寧な日常生活の描写にある是枝監督の演出力
15年前に人命救助で犠牲になった兄純平の命日の夏の終わりに帰省した横山良多を主人公にした一泊二日の家族の情景。日常の飾らない生活風景を自然に演出する是枝監督の視点が、どの登場人物も美化せず、そのありのままの感情を的確で時に辛辣な台詞の会話劇としてじっくりと見せる。偏狭な日本家屋故の交差する会話のリアリティが、一人ひとりを浮かび上がらせる映画的な技法。作劇上で興味深いのが、妻ゆかりの連れ子あつしを亡くなった純平の化身のような立場にして、冷静に寡黙に横山家を見詰める構図である。母とし子と良太一家の墓参り場面では、あつしと墓石を並べたカットを入れ、夕食のうな重を食べるシーンでは、母とし子と父恭平の間にあつしを座らせる。そのお蔭で部外者である観客の第三者の視点が、あつしを介して映画の中にすんなりと入っていける心地良さがあるが、問題を解決できないで後悔する家族の生きる苦々しさが後味として残る。演出で過剰なのが、助けられた少年の成長した容姿。ワイシャツを汗びっしょりにさせた肥満体に泥まみれの靴下を履かせ、尚且つあつしに笑わせているところ。息子を失った母の遣りきれない喪失感を良多に打ち明けるとし子の残酷な言葉の正当性を裏付けるが、パチンコで不満を解消する設定と併せて、女優樹木希林の演技の質とはかけ離れた違和感を覚える。
ラスト、4人になった良太家族のお墓参りのエンディングは余計ではないだろうか。良多のモノローグが被さる、階段を上がり消えゆく老夫婦のショットで余韻は充分出ていると思うのだが。しかし、細部に渡り計算された台詞の構成力や百日紅の花を使った映像美などにある是枝監督の演出の拘りには感心しました。情愛の美しさを描く日本的な映画美学から隔絶しても、居心地の悪さを感じながら歩いていく人生の悲哀を抽出した、紛れもない日本の何処かにあるであろうホームドラマになっています。演技面では、樹木希林と夏川結衣が特に良かった。
【親にとって、子供は幾つになっても大切な存在。取り分け母親は・・。妻帯者にはかなり、身の引き締まる作品でもある。】
■印象的且つ怖いシーン
1.阿部寛演じる良太が、久しぶりに兄の命日に横浜にある実家に、妻(夏川結衣)と妻の連れ子の男の子とともに訪問するところから物語は始まる。
良太の母(樹木希林)は嬉しそうに、良太の姉(YOU)と料理を作る。トウモロコシのかき揚げなど・・。
良太の父(原田芳雄)は町医者だったが、現在は楽隠居。だが、気難しく良太とはそりが合わない。亡き兄”しゅうへい”が後を継ぐ筈だったが・・。
ーここでの、良太の両親の何だかんだ言いながらも、嬉しそうな姿。親というものは、そういうものなのだろうなあ・・。-
2.”しゅうへい”が海で助けた太った青年が、供養に訪れるシーン。父は”あんな奴のために、しゅうへいは・・”と怒りを露わにするが、母は何気ない素振り。
ーだが、その夜、”もう呼ばなくて良いのでは・・”と言った良太に対して、母が強い口調で言った言葉。
”だから、呼んでいるんだよ・・。、あの子にだって、年に一回くらいは辛い思いをしてもらわないと・・”
母親の我が子を失った無念がヒシヒシと伝わる場面である。樹木希林さんの思い詰めたような表情が凄い。-
3.二世帯同居を望む姉夫婦が帰った後、老夫婦と良太の家族が鰻を食べるシーン。突然、母がレコードを聴こうと言い出す。
流れる”ブルーライトヨコハマ” ”歩いても,歩いても・・”
微妙な空気が流れる。特に父の複雑な表情。
父が入浴中に、衣類を替えに来た妻に聞く‥。”アレ、いつ買ったんだ・・”
明るい声で”貴方が、あの女のアパートに行っていたとき・・。貴方が歌っていたでしょう・・。良太を背負って聴いていたのよ・・”
ー怖い、怖い、怖い、怖い・・・。
浮気していた時から、ずっと聞いていたのでしょうか・・。今作品中、一番怖かった場面である。-
4.亡き息子の写真の上に黄色い蝶が舞い止まるシーン。蝶を”しゅうへいよ・・”と呼びながら追いかける母の姿。
5.母の良太の妻に対する言葉遣い。
ー母親にとって、息子を奪った人間には、ついキツイ言葉を述べてしまうのかなあ・・。樹木希林さんの穏やかな声で言われると更に怖い・・。ー
<ある家族の、10数年前に海の事故で亡くした子供の命日に集まった二男家族、娘家族と老夫婦が過ごす2日間を描く中で、親の子を思う気持ちを絶妙に描き出した作品。
是枝監督が、”家族”をテーマとし、本格的にエンタメ色を出し始めた作品でもある。>
<2010年頃、DVDにて鑑賞>
<2020年8月26日 他の媒体にて再鑑賞>
自分もまた本作の父や母のように老い、子供がまた家族をつくって行くのだということ
タイトルの意味は劇中で語られます
1968年12月発売のいしだあゆみの大ヒット曲「ブルーライトヨコハマ」の歌詞の一節です
樹木希林の演じる母が、そのシングル盤を主人公の良多に掛けさせます
父は母が、通販で昭和の歌謡なんとか30巻セットを騙されて買ったんだと言うのですが、それでは有りません
そのレコードは死んだ長男の机の引き出しに大事に隠してあったシングル盤です
その歌はあまい恋の歌です
彼女は夫を追及します
あなたに関係ない歌なわけ無いでしょう
良多をおぶって板橋の夫の浮気相手の女のアパートに行った時、部屋の中から♪歩いても~と歌うあなたの声が聞こえたのよ
邪魔したら悪いと思ってそのまま帰って、次の日に駅の西口のレコード屋で買ったのですよと
背筋が凍るような話です
40年昔の事を恨んで、声を荒げることもなく淡々とそれをいうのです
そして、そのすぐあと兄の命日に毎年、助けられた今では成年した少年を呼ぶ理由を彼女は明かすのです
女の恨みは深く静かで消えないものだということです
そのレコードが何故、長男の遺品の机の引き出しに入れられていたのか
長男が危篤の時も、自分の患者を優先したことを非難していたのだと思います
良多は子連れの妻と結婚したこと、失業したこともあり実家にはあまり近寄らなかったようです
この日も日帰りで帰ろうと言い出したりします
しかし妻はそうはいきません
そんな中でも懸命にこの家族の一員になろうと頑張っています
自分の妻もこのように苦労していたのだと今更ながらチクチクと胸が痛みます
このように本作では女性が強いです
というかこれが日本の家庭の普通なのでしょう
男はそうした隠された感情が小出しにされて、オロオロするばかりです
家族を作り繋いでいくのは母、娘、嫁です
男はなんの役にも立たないのです
良多は、隣の急病人に対して無力をさらけ出した父の老いを目の当たりにして何かが変わったようです
主人公良多の妻の連れ子のあつしは、父と死別したことに衝撃を強く受けていることが次第に明らかになってきます
彼はこの一晩でこの家族の男の立場を見て何かを感じています
良ちゃんを父として受け入れようという気になったようです
この一泊で彼も何か成長したようです
親孝行したいときには親はなし
生きているときは、説教されるのが疎ましく実家には近寄りもしないものです
お相撲さんの名前をバスがでてから思い出すように、人生にタイミングよく物事が進むことはなく気が付いたときにはもう手遅れの場合が多いようです
ラストシーン
良多と妻の間には女の子が産まれもう4歳位のように見えます
あつしは中学生ですから5年後のようです
姉の夫から買ったであろう車が走り去ります
娘も作り、車も買え免許も取っているのだから仕事もすぐ見つかり生活は安定しているようです
しかし良多は血のつながった孫娘を見せることも、母を車に乗せることも、父とあつしとでサッカーにも行けなかったのです
家族との濃密な関係は時に疎ましく、自由でありたいと感じるものです
しかし、自分が家族を持ち、子供が育ってくるとどうしても家族のつながりを求めたくなるのです
それは自分もまた本作の父や母のように老い、子供がまた家族をつくって行くのだと、やっと思い至るからだと思います
その時に、いしだあゆみの歌のようなエピソードがふとした時に妻から飛び出して来ないように、おかしなことにならないように気を付けていたいものです
もう手遅れかも知れませんが
名作。
劇的でなく格好良くもない素晴らしい映画
最後まで何も起こらない映画だった。良い意味で。
主人公(阿部寛)の兄が亡くなったりと事件はあったが、それも劇的には描かれない。全てがリアルだ。だから抵抗なく観ているヒトの心に届く、感じる。
胸に響く含蓄のあるセリフがたくさん出てくるのだけれど、どれもサラッと流れていく。自らの経験に結びつかない、感じないセリフは多分気づかない。僕もたくさん気づかずに逃していると思う。でもそれでいい。観たヒトそれぞれち届く言葉、シーンがきっとあると思う。
「人生はいつも、ちょっとだけ間に合わない。」とても胸に響くセリフでした。ラストシーンは静かに涙ぐんでしまいました。
それぞれの人間の、それぞれに対する表の顔と本音が繊細に描かれている映画だった。ものすごい映画です。日本映画らしい良さが生きていて大好きです。
自然すぎて恐ろしい
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