「どんな時でも逃げない優しさ」ぐるりのこと。 髭ジョンさんの映画レビュー(感想・評価)
どんな時でも逃げない優しさ
どこにでもいそうな夫婦の10年間の日常生活をリアルに描いている。
妻は出版社の編集者、夫は法廷画家をやりながら絵画教室で教えている。
法廷では異様で異常な修羅場のシーンが描かれる。
妻は出産するが直ぐに子供を亡くす。それ以来妻の心は次第に壊れて行く。
妻は自信をなくして仕事も辞める。坂道を転がるように深く傷ついた心は泥沼に沈んでいく。
しかし、そんな妻を普段は女たらしでだらしのない夫ではあるのだけれど、彼は修羅場から逃げずに大きくて深い愛の心で受け止めるのである。
妻は夫の愛に支えられて絶望の淵から這い上がって再生して行く……
時として人は日常に潜む狂気と冷酷さと危うさに失意したり絶望するけれど、それでも人はさり気ない愛や優しさに希望を見出して行く。
ぐるりのこととは、良くも悪くもどうしようもない人、人、人…のことである。
リリー・フランキーの物憂くて飄々としている雰囲気の中に男の孤独とさり気ない優しさが垣間見えるのがいい。
木村多江も女とはこういうものだという演技をしてくれるいい女優さんである。
主役の二人の他にも柄本明初めいい配役陣を揃えている。
観て後味のいい映画だった。
コメントする