「鈴子の成長」百万円と苦虫女 のこっとさんの映画レビュー(感想・評価)
鈴子の成長
私の好きな映画。
ストーリーも、役者さんの演技も、映画自体の雰囲気もすごく好きでした。最後に伝えたいことをきゅっとまとめてある、全体的にきれいにまとまってたように感じた。
物語は全て鈴子(蒼井優)を中心に回っていました。
鈴子が家を出て、突然問題が発生し、家に帰ると家では拒絶され、また家を出る。それは100万貯めたら家を出る。そう言って100万貯めてから家を出て行く。
弟は成績もよく、最初は姉鈴子をバカにしていた。しかし、家を出て行く間際に、鈴子が周囲からひどいことを言われる場面に遭遇する。彼女はそれに立ち向かった。その姿を目に焼き付けた弟。姉の強さを感じたのだ。弟はいじめられている自分が何もできない弱い人間だと感じている。姉が出て行く時に、「ときどき手紙を送ってね」と言い残した。
そして、姉は出て行くことに。最初は海の家、次に山へ。どこへ行っても前科がある自分を恥じて、100万貯まったら出て行くという条件をつけ、どこかへ定住することはない。そこで、次に行きついた場所が花屋さん。そして出会った中島くん(森山未來)。恋心を抱く自分に気づく、ふと2人でカフェで話をしている時に、自分の過去について鈴子は話す。「100万貯まったら出ていく」ということも。中島くんは「じゃあ、この町も100万貯まったら出ていくの?」答えられない鈴子はカフェを飛び出し中島くんから逃げるように歩く。自分が中島くんを好きなことには気づいていた。100万貯まったら出て行かなければならない自分のことをはっきりと答えられなかったのだろう。そこでは中島くんから好きだと言われ、2人は付き合うことに。しかし、町を出て行く話は曖昧に。
時が少し過ぎ、鈴子の通帳は96万円くらい。
たぶんそれに中島くんも気づいていた。だから彼は「お金を貸してくれ」と言う。なんて不器用なんだ!彼女が100万貯まると出て行く、なら、貯めさせない。しかし、それに違和感を感じる鈴子。お金を貸す日々を続け、「なぜなの?」という鈴子。そして、別れを告げるのだ。
お金が貯まっても貯まらなくても出て行ってしまった鈴子。本当のことを伝えられなかった中島くん。駅まで追いかけに行く中島くんと鈴子のすれ違い。なんと、すれ違いのままこの映画は終わるのだ。ドラマのような展開で言うと、ここで中島くんが、本当のことを話す。ハッピーエンド!で終わりだけど、これは違う。鈴子が階段を登り、振り返り、「いるわけないか」って呟いて終わる。こんな展開!と思いながらももやもやもやもや。でもそんな展開好きでした。
あともう一つの側面として、弟と姉の関係。手紙を出すと言いながら、書いてはいたものの、一度も出さなかった姉。そんな姉に、弟から手紙が届く。自分はいじめられているのだ、そしてそれに怒ったら喧嘩になった、そしたら自分が悪いのだと言われた。お姉ちゃん、僕が悪いのかな?でも、最後に見たお姉ちゃんの立ち向かう姿が心に残っている、だから自分は逃げない。そのいじめっ子たちと同じ中学に行くんだ。という手紙を読んだ姉。自分はこれまでどこへ行っても出て行く、逃げている自分に気付く、いつの間にか弟の方が強くなっていることに。
こんな感じがざっくりストーリーでした。
「自分は今まで相手に何も言わずに逃げていた。向き合わずに逃げていたんだ。はっきり言わないほうが相手との争いもなくそれが一番良い手段なんだと思っていた。しかし、言わなきゃ分からないことがある、言うことも必要なんだ」と最後にそんなことを言っていた。それが今の自分には響いた。私もずっと昔から言えない性格。毎回こんなふうな映画を見るたびに思っている。変わろうと思う自分と変われない自分、そんなきっかけを与えてくれる映画。私も変わろう。頑張ろう。と思えた。
蒼井優も森山未來も、役がぴったり!演技が上手かったです。総じて最高でした!!!!!