「ダビデとゴリアテ」告発のとき ぬかよろこびさんの映画レビュー(感想・評価)
ダビデとゴリアテ
退役軍人ハンクはイラク戦争から帰還後失踪した息子マイクの悲惨な死を知り、真相を追ううちに携帯電話が一つの手がかりとなる。戦場という場面にはおよそ最もふさわしくない存在の携帯電話、それは現代の我々にとって最も身近なもの、日常的なものの象徴でもある。
軍隊で訓練を積んできたとは言え、20年余りを現代社会の中で育ってきた若者が、いきなり殺すか殺されるかの戦場に送り込まれる。そこで立派な兵士になるため、というよりは何とか生き延びて帰国するためには、自分の中の日常的なものを取り壊していかなければ耐えられるものではないのだろう。
帰国兵の多くは心の闇に怯えPTSDで苦しみ、社会に適応できずに苦しんでいる。その一面で家族への愛、戦友の家族への思いやりも持ち続け、戦争体験はかくも人の人格を断片化させるのかと思う。
ハンクは徐々に真相へと近づいていくが犯人に対する憎しみを通り越して、この国の未来は大丈夫なのかと問いかけてくる。
自由や平和のための戦争と言う大義名分のウラで一体何が起きているのか、Elahの谷でダビデは恐怖に打ち克って巨人戦士ゴリアテに一人挑み、石投げ器の一撃で倒してしまう。
今我々が勇気をもって挑まなければならない「巨人」とは何なのかを考えさせる作品でした。
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