「ディズニーアニメの常識をひっくり返し、映画の前半は台詞なし!でも作品世界に引き込むところがすごいです。」ウォーリー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ディズニーアニメの常識をひっくり返し、映画の前半は台詞なし!でも作品世界に引き込むところがすごいです。
まさに奇跡と言うべき映像でした。
この作品が、いかにディズニーアニメの常識をひっくり返しているかというと、通常ならドタバタ気味で、慌ただしいカット割りと台詞の応酬でディズニーの世界へ引きずり込んでいくのが定番でした。
しかし、映画の前半はウォーリーただ一人が黙々とゴミ処理の仕事をし、ホームベースに戻るところを描くだけなので、なんと台詞がない!聞こえてくるのはウォーリーの発する電子音だけだったのです。
この音を開発したのは、スターウォーズ「R2-D2」で知られるベン・ハート。彼はスターウォーズ」で1000余りのロボットの音を開発しました。本作では、それを遙かにしのぐ2600もロボット音を開発したそうです。台詞がないだけに、ベンの作る音によって、ロボットたちにいのちが吹き込まれたようなものです。
本作は、冒頭からずっとウォーリーの日常を描いていきます。それは同時に作品の舞台の29世紀の地球がどんな有様になっているかが、垣間見ねことになり半端じゃなく飽きさせません。
人一人いない荒涼とした都市の廃墟の描写は途方もなくダイナミック!ゴミで埋め尽くされた都市の片隅には、ウォーリーが積み上げたゴミの固めたものがピラミッドのように天高くそびえ立っていました。
無人で広大な都市空間の描写は、ウォーリーの孤独さを引き立てるばかりでしたのです。
そして、休眠時にはただの四角い錆びた鉄の箱となってしまうウォーリーの人間くさいこと!好奇心旺盛なコレクターでもあるウォーリーがコレクションを整理するところなど、そのこだわりに笑ってしまいました。
イブに初遭遇したとき、恐怖の余り身震いするところなど人間並みの「表情」も特筆ものです。
イブも物語の進行と同時に、ちょっと怖い大型のたまごっちみたいな感じから、すっかりお転婆な女の子という感じに見方が変わっていきました。
宇宙に飛び出したウォーリーが、イブと宇宙飛行を楽しむシーンはとってもファンタジックで、胸が熱くなるほどでした。このシーンでは、太陽の位置で変わる物体の陰影を画面上に演出し、過去のどの類似シーンにも勝る見事な出来映えでした。
あとあることで休眠状態となったイブを気遣い、傘を立てたり、いろいろ気遣うウォーリーの姿の映像を、再起動したイブがメモリーから再生するときすごく感激するのです。機械なのに、二人の愛情が身にしみてきて、胸が熱くなりました。
だからウォーリーが故障してしまったとき、イブの記憶を失ってしまい、誰だか認識しなくなったときの彼女の悲しみは痛いほど伝わってきたのです。あれほど必至で修理したのにねぇ~とね。
さて、地球を捨てて宇宙ステーションで暮らす人類はどうなっていたかというと、何でもロボットがやってくれて、肉体を使わず暮らせることから、みんなぶよぶよに太っていました。
一株の植物の株の存在が、人類の地球帰還への可能性を示しても、システムを管理するロボットは頑と帰還を阻止しようとします。ここでも科学文明と人間との調和という普遍的なテーマが皮肉混じりに織り込まれていたのです。
本作は、ウォーリーとイブの奇跡な愛を描くほかに、環境を浪費し続ける現代の文明に警鐘をを鳴らし、自然環境の大切さを伝えて充分でした。
『ファイティングニモ』の場合は、小魚が主人公という設定上の無理がリアル邸を損ねていましたが、今回はロボットが主人公であり、シナリオもよく練られていて、ラストまで多いに楽しめました。グロい表現が皆無なので、小さいお子さんから大人まで家族そろって楽しめることでしょう。
追伸
なんとアニメ初のアカデミー作品賞入賞が有力視されているそうです!