ラスト、コーションのレビュー・感想・評価
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わかりやすい抗日暗殺モノ。
レジスタンスが敵と目される人物を暗殺するといった内容の映画は数多くあるけど、中国映画となるとなかなかお目にかかれない。最近見た映画では『パープル・バタフライ』なんてのがあった。しかし、今作では暗殺のターゲットは同じ中国人イー(トニー・レオン)。戦時下でもあり、日本政府の犬と噂されるほどの人物だが、特務機関の仕事は抗日運動する中国人を捕え葬ることにあった・・・
“抗日”といっても、戦時下ではどこでも湧きおこる“反戦”と同義だと思う。列強の帝国主義による中国分割の時代からずっと虐げられる生活が続いていたと想像できるだけに、常に被占領の意識があったことでしょう。それでも直接侵略軍とゲリラ戦を行うのではなく、自国内の裏切り者を暗殺するという、どちらかというと愛国右翼的な行動のような雰囲気でした。
とにかく標的はイー一人。香港の大学で知り合った6人の劇団員は稚拙ながらもチアチー(タン・ウェイ)を上流夫人に仕立て上げて、慎重で隙がない彼に近づいてゆく。やがて愛人になれそうな雰囲気になったとき、性体験がないと不自然なため仲間うちで無理矢理セックスしてしまう。信条のためとはいえ、ここまで機械的に女スパイに徹する若者たちに悲しくなってしまう。ただ、計画前の劇団公演における「中国を滅ぼすな」コールで気分高揚してしまったので、こんな悲しさもすんなり受け入れられた・・・
R18指定だけあって激しいセックス描写。男の愛欲も真剣であるはずなのに、殺せるほどの隙がない。チアチーがフックにかかっている拳銃を見つける。イーはその彼女の表情をチラリと見る。するとチアチーは枕でイーの目を隠す・・・このときすでに殺害を諦めていたのか、愛し始めていたのか・・・などと、ベッドシーンにおける心理のやりとりも見どころのひとつ。
アン・リー監督は何度も登場する麻雀シーンにこだわったと答えていたけど、切り返しという点ではさほどのアイデアもなかったような。日本では11PMでの実況中継や、『麻雀放浪記』といった撮り方に工夫した映像があるためかもしれない。そういえば、タン・ウェイの腋毛も印象的ですが、『麻雀放浪記』の加賀まり子もフサフサだったような記憶がある・・・けど、確信はもてない。
わかりやすく完成度も高い作品だった。しかし、イーとチアチーが宝石店で顔を見合わせたシーンはなぜか唐突感が残ってしまいました。それまでに仲間の姿を確認していたけど、どこで決断したのか・・・表情だけでは読み取れなかった。
【2008年2月映画館にて】
R18指定も納得
ストーリーも人物も情事もハード
主役の2人の演技が素晴らしく、最後のトニー・レオンの表情がとても胸にきました。
あれだけ鉄の様だった男が…その後の男の未来も感じさせてなんとも言い難い…
常に緊迫感が漂い全編を通して張り詰めた空気が流れていて濡場のたびに緊張感が増し死の気配が近づいて来る様で、何とも骨太な濡場だなぁと
途中日本の楼閣が出てくるのですがそこが凄く印象的でした。当時の中国の空気感の中で見える日本人の違和感が脚色も飾りも無く映し出されていた様に思える…
加えてタン・ウェイの唄のシーンがあり(これが良かった!)時代と2人の関係に終わりを感じさせてぐっとくる。
切ない...
ダイヤモンドのゆびわ
あまり映画を見る気分ではなかったけれど、
「スパイの映画見に行こう」
と母に誘われてついていった
何も分からずに映画館に到着し、
ポスターを通りすがりに見ると、
「R18」
の文字が見えた
.
スパイ・チアチーの手に落ち、
まんまと心奪われるイー
普段は誰にも心許さないイー
なのに、
チアチーにアブノーマルプレイをぶつけ
安らぎを求め
しまいには、
ダイヤモンドのゆびわを贈る
その裏ではイーを殺害するという、
チアチーと仲間たちの計画は進み
しかし土壇場で、
チアチーは仲間を裏切り、
イーを逃がす決断をする
.
しかし、チアチーは処刑
どんでん返しはない
当然のラストが待っている
うっかり女スパイの手に落ちた、
男の悲しい孤独
うっかりターゲットへの情にほだされた、
女の死
死んだ女から返されてきた、
ダイヤのゆびわ
すべて終わったのだと物語るゆびわ…
うまく作ってある映画だとおもいました
.
恋は、女の身体の機微に触れたときにはじまるものである
第二次世界大戦時の日本が上海に傀儡政権で入り込んでいる頃。
彼女が抗日運動に参加したのは、好意的に誘ってきた学生劇団員が素敵だったから。
それは淡い恋のはじまりかと思えた。
劇団らしくストーリーを企てストーリーに沿ったスパイをつくりあげる。
設定はある企業の社長夫人。貿易で色々なモノが手に入る。
対象となる抗日組織の特務機関夫人に接近するために。
スパイに抜擢された主人公ワンは、劇団に好意を寄せている人がいながらも男性経験のないため、ハニートラップとして劇団員と肉体関係の練習を積む。
こうした地味な準備をしていたなかで彼らのなかで計画を阻むような事故が起こる。
危険を感じ、ワンは、この場を去る。
時は流れ、彼らは、再会し、立ち消えになったスパイ活動の抗日組織の特務機関トニー・レオン演じるイーの暗殺計画を遂行するために今度は、大胆に活動する。
恋は妄想ではなく、女のからだの機微に触れた瞬間から起こるのである。男性はこのことは知らない。この映画では、それを描いた映画だと思った。
目では、劇団員の青年を好意的に見る。でもそれは、愛を引き起こすほどに彼女を揺さぶるものではなかった。
前ぶれもなくいきなり男性に抱きしめられるときに平静を維持できなくなるような女の女である部分が踊りはじめ抑えきれないほどに込み上がってくるのだ。
彼女は、それを感じてしまったんだ。
男性のスーツに顔をうずめるとき、外気のにおいに仕事を向いている横顔を見、女をよこせつけられない鎧のような堅さを感じる。スーツを脱ぎ、鎧が解け仕事も何もかもを忘れ女にまっすぐに向き合ってくれる瞬間がセックスだと思う。それが描かれていた。
最期に彼女との関係を告げるように哀しく響く10時を知らせる時計の音が。
日本が犯した「罪と罰」
哀しい愛の物語。
その原因は、第2次世界大戦。
本当なら、中国でなく、
日本が、作らなくてはならない。
でも日本では作れない。有名無名の
言論統制が敷かれているから。そして、
それだけの器の大きさがないから。。。
性描写が、あまりにも激しく、
R18に指定されている。事実、
性シーンでは、ぼかしが入りまくっている。
しかし、不必要なシーンは皆無だ。
このシーンがなければ、愛の深さは伝わらない。
そして、この深さが更に悲しみを増幅させていく。
ラストシーン
「逃げて」と彼女は殺すべき相手に囁く。
そう、全身全霊を持って彼女は彼を愛し、
誰もが知らない、彼の心の闇を知ってしまったから。
邦画では此処までの美しさは出せない。
此処まで掘り下げることもできない。
経済力だけでなく、
芸術面でも、中国に抜かれる日は
近づいているのだろう。争うことなく、
双方がいいものを保管しあう関係に
なって欲しいと、切に願わずにはいられない。
愛と命がけのスパイ活動
「身も心も投じなければ、彼の信頼は得られない」
女工作員の命がけのスパイ活動中の言葉。
彼女の罠に見事はまった日本軍下高官。見せ掛けの疑似国家で、彼女の存在だけが男にとって信じられる唯一無二のものとなっていった。
映画はスパイ活動よりも二人の逢引きを中心に展開されるが、過激な描写ながらも、そこには常に緊迫感があり、快楽に溺れるというよりは痛みや悲しみを表現していると思われる。
愛する男の為と始めた工作活動であったが、いつしか愛してくれる男へと気持ちが変化する。女の性なのだろうか?
そして暗殺のXデー。不幸にもこの時女は愛されて罪悪を感じてしまう。生殺与奪。心は揺れる。男を見つめ、長い沈黙の後、囁く。
「逃げて・・・」
逃げ去る男をそっと尻目に、街を彷徨う女の姿からは、嫌というほどの絶望感が伝わってきた。
ラストは工作員達の処刑シーンで終わるが、ここはリアルで無くてよかった。女は充分苦しんできた。顛末は暗示するだけで伝わるではないか。
戦争という時代に翻弄された一人の中国女性の愛と悲壮の物語であった。
激しい濡れ場、しかしそれがこの映画の心臓部分
「ラスト、コーション」は
日中戦争の最中に日本に組する狡猾な男を
暗殺しようと使命に燃えた学生グループがその男に近付く為に、
グループ中の一人の女性に手練手管を覚えさせ、
男に近付こうとする話です。
あのいつ死ぬかわからない時代設定だから、
そんな事もあるかな?
とは思えるものの、平時には考えられないお話です。
しかも彼女には好きな人が直ぐ側にいたのです。
そんな淡い思いを断ち切って、ハードな一歩を踏み出します。
ところが、一度は接近に失敗、彼女の失ったものは
如何ばかりものか、
当然、グループの中から抜け出し、
一人失踪してしまいます。
その後また男に接近する機会が出来
彼女は狡猾な男に近付くことになってしまうのですが、
彼に取り入るその過程での濡れ場の凄いこと、
日本ではかなりカット及びボカシがはいってしまったそうです。
こう書くといやらしいように聞こえるかもしれませんが、
濡れ場シーンはこの映画の心臓部なのです。
このシーンがいい加減だったら、全て嘘になってしまうからです。
彼は彼女に本気で惚れ
そんな思いに戸惑い始めた彼女がとった行動が哀れなのです。
ヒトを好きになるという事が、こんなに憐れと思ったのは
めったにありません。
そしてその後の彼女の運命がまた、憐れなのです。
合掌!
私は糸、あなたは針。一度、通したら二度と離れない
映画「ラスト、コーション」(アン・リー監督)から。
舞台は1942年、日本占領下の上海。
敵対する男女同士の恋は、観ていてドキドキさせられた。
禁じられれぱ禁じられるほど、燃えてくる気持ち。
よくある物語といえば、物語なのだが、
この映画を思い出すに相応しい台詞を見つけたのでメモをした。
「私は糸、あなたは針。一度、通したら二度と離れない」
お互い見つかれば死を覚悟しなければならないほど危険な恋、
それでも、2人は愛し合う。
う〜ん、私には、未だ理解できない・・(汗)。
しかし、離れたくない、という気持ちをうまく表現している。
男が糸で、女が針かぁ。
男はエッチだから、ちょっと違う発想なんだけどわかるかな?
(針の穴に、男が糸を突っ込む・・なんて感じ(笑))
せっかくの、美しい恋愛ネタを、こんなシモネタにして、
また読者を減らすな、これは。
女性の方が、この映画の良さを理解できるかも
今年の2月に劇場で観て以来、この映画のことは度々思い出すが、今一つどう評価したらいいのか分かりません。個人的に、この映画は実際の所、どのようなメッセージを自分に語りかけているのかを今だに掴みかねる始末。
時は、日本軍が満州を侵略した時代。(←「そうでない」というお方もいらっしゃいますが。)反日秘密結社に仕える一人の若き女が、日本軍に加担している一人の男を暗殺せよと指令されます。猜疑心の塊の男(トニー・レオン)に近づくために、愛人となる過程が、過激なベッドシーンを交えながら描かれていきます。
最後の宝石店でのタン・ウェイの演技が見事。ある意味、女性の本質というものはあのシーンに詰まっているような気がしました。自らの青春を放棄し、恋心を抱いていた男とも結ばれず、ひたすら時代に翻弄されながら自分を欺き続けた女性。最後の悲劇は、いかなるリスクも省みずに解き放った本当の乙女心だった。ということになるのでしょうか。そう考えれば、あれで良かったのかもね。
まぁ、気の重くなる一作です。末筆ながら、本作でのトニー・レオンにはもはや演技の神様が降臨しております。あんな眼で見つめられたら、そりゃ情は抱いちゃうよね。
1人で良かった~
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