「「死神の精度」より、死神千葉の首振りのリズム精度に注目」Sweet Rain 死神の精度 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
「死神の精度」より、死神千葉の首振りのリズム精度に注目
ミュージックが大好きな死神たち。彼らは人間と変わりない容姿であるし、ノートに触らずとも誰にも見える存在なのです。違っている点といえば、彼らが人間に触れるとたちまち気絶してしまうため常に白い手袋をしているところくらい。あり得ない存在であるがゆえに、病気や自殺といった死には関わっていない等の設定がわざとらしくない程度に説明されています。死神といえば日テレ!こうした扱いに慣れてきているのかもしれません・・・
映画はまずプロローグがあり、3つに分けたオムニバス形式で展開します。しかし、このオムニバス。映画としてはヒットしないのが定説ではありますが、敢えてこの形式をとったというのは何かあるはず!と勘繰ってしまいます。一見すると繋がりそうもない彼らが実は・・・と、身構えてしまう・・・推理するのは悪い癖だと思いつつも、そこらじゅうにヒントが散りばめられているのでしょうがない、ああ・・・。というより、繋がらなければ全く面白くない映画なので、ついつい期待もしてしまうのです。
最初のストーリーでは死神の千葉(金城武)が家電メーカーのコールセンターをしている冴えないOL藤木一恵(小西真奈美)の判定をします。接触して“実行=死”か“見送り=生かせる”かを「目的を果たせたかどうか」という死神独自の基準によって決めるという、かなり残酷な内容。しかも人間界には不慣れでどこか間抜けな表情を見せる死神によってですよ~
次は抗争の挟間にある40歳のヤクザ(光石研)。死ぬかどうかという運命は死神が握っているのですが、相手のヤクザにだって当然のように死神が憑いている。光石研に注目してしまうところなのに、子分の石田卓也が実は重要な人物。第三話へと絶妙な橋渡しをしているのです。
とにかく、ひょうきんでとぼけた死神の金城武が面白い。ミュージック、ミュージック~と、好きなのはわかるけど、ジャンルも何でもOKという節操のなさ。死神が大挙して押し寄せるレコード店の店員山本浩司は大迷惑・・・しかし彼には死神だなんてわからない。彼の泣きそうな表情も見どころかもしれません。その他、第三話での富司純子の演技はとても良かった。助演女優賞候補決定です(なにかの・・・)。
原作も知らないし、予備知識も全くなかったのですが、それが良かったのかもしれません。金城武の髪型は頻繁に変化するものの、彼の年齢が変わらないので時代の変化が微妙なんです。携帯が存在しているかどうか、小西真奈美の職場がわざとらしく汚いこと、藤木一恵のCDには“懐かしの歌姫”と書いてあること、そして、『A.I.』に出てくるようなアンドロイドやニュースで流れる“日本で二度めのワールドカップ”など。時代の変化を少ないヒントで表現してあるのです。これによって同じ時代だと勘違いする人がいれば制作側の大勝利といったところでしょうか。まぁ、“生き別れ”とか“歌手”というキーワードもいっぱいあったので、気付かない人は少ないんでしょうけど・・・実際は1985年、2007年、2028年と変化しているらしいのですが、そんな説明なんてありませんもん。