おくりびとのレビュー・感想・評価
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まさに秀作!
納棺師、というあまり耳慣れない職業についた男とその周辺の人々の物語。
死は皆にいつか訪れるもので、誰しも身内や知人のお葬式には
1度くらいは出たことがあるはず。
でも、お葬式には出席していても、現代ではなかなか「納棺」の瞬間に
立ち会うことは無いのではないでしょうか?
ちょっと ナゾのベールに包まれた納棺師という仕事。
一言で言えば、「死体を納棺する」仕事ですが、
死者に敬意と愛情を持って、丁寧に着替えさせ、化粧をする・・・。
本木さんのイリュージョンとも思える仕事ぶりのせいなのか、
その姿は、とても崇高なものに見えました。
今まで知らなかった職業を、少しだけ垣間見ることが出来て
とても興味深く 「仕事」というものについても考えさせられるお話でした。
山崎努さん、吉行和子さん、余貴美子さん、笹野高史さんといった
日本映画界を代表する名役者さんが脇を固め、素晴らしい演技で
魅せてくれます。
特に一言、二言で多くを語る笹野さんの燻し銀の演技は素晴らしい。
エンドロールは必見。終わりと思ってさっさと席を立ってしまうと
いいものを見逃してしまいます。
笑えて、泣けて、ジンと来て・・・まさに秀作です。
P.S.
モントリオール映画祭で受賞したとのお知らせ!
当然、というか、納得の受賞!
人の死、人生って ユニバーサルなテーマですものね。
こういうとっても「日本らしい」映画が受賞するのは嬉しいですね。
死を目の当たりにし、生を見つめ、過去を乗り越え、未来を見つめる。
お高いチェロを買ったばかりで、
これからと思っていたところでの楽団の解散。
チェロ奏者として食っていくことをあきらめ、
故郷の山形に帰ってきた大悟(本木雅弘)は好条件であった
“旅のお手伝い”という、NKエージェントの求人広告を見つける。
どんな仕事かも分からず面接で社長の佐々木(山崎努)に即採用されるが、
業務内容はなんと、安らかな“旅立ちのお手伝い”である納棺。
遺体を棺に納める仕事であった。
戸惑う大悟だったが妻の美香(広末涼子)には冠婚葬祭関係だと、
結婚式場の仕事だと偽り、見習いとして働き出す。
美人だと思っていたら・・・、幼い子供を残して亡くなった母親、
キスマークたくさんのお爺ちゃんと、
千差万別な別れと向き合っていくうちに、
納棺師という仕事の素晴らしさを実感していく。
素晴らしい所作であの世への旅立ちの衣装を着せ、
美しくしてくれてありがとうと、感謝されるほどの化粧を施し、
その人なりの美しさを引き出して、遺体を棺に納める納棺師という職業を、
真正面から描き、多くの別れと対峙し、
人生の最期に必要だと思われる職業を通して、家族を、夫婦を描く。
僕の感情のクライマックスは、かなり早めに訪れた。
初めての遺体を目の前にし、
それもある程度の腐敗が進んだと思われる遺体で、
その目を覆いたくなるような遺体を、強烈そうな匂いを、
体感した後にとった行動。
妻の用意した食事を目の前にし、大悟がとった行動が、
作品全体で僕の感情のクライマックスであった。
そのシーンもデビュー当時からの広末ファンとしては、
複雑ではあるけども、もっと激しくても、と思うんだけど、
広末の限界か、事務所の限界か。
その後は出てきた要素を、
予想通りに使って終わったという印象がないわけではない。
社長の納棺技術を見ることによって、
大悟もその技術を学び納棺師として誇りを持つ。
お客さんに、大悟に、美香に、観客に見せて理解させる。
よく分かるし、作品中で語られるように納棺技術は美しいと思えたし、
知らなければ、大悟が客にも友人にも言われたように、
死人を飯の種にしているだけと、もっとまともな仕事につけと、
職業に対する偏見を持ってはいけないと思っていても、
納棺師を思うかもしれない。
大悟自身も始めは誇りが持てず、堂々と言えなかった。
そんな人を、観てる僕も、黙らせ感じさせる美しさはあった。
しかし、理解させ、予想通りの感動へいってしまって、
作品のクライマックスに、
僕の感情がクライマックスへと行かなかったのが残念というのは、
それぞれの物語が、それぞれ感じさせ、考えさせられましたし、
ちょっと、贅沢な感想なのかもしれない。
予想通りだとしても、感情がラストへ向けて盛り上がらなかったのは、
下手だとは全く思わないけども、
役者陣が予想の範囲内の演技だったのも大きいと思う。
本木雅弘は納棺の手引きでは遺体として頑張り、
それなりに体を張って笑わせてくれたし、
納棺の技術を施している姿も美しく、
チェロを演奏している姿も様になっていたが、
凄い、というような揺さぶられるような演技は少なかった。
それは他の役者陣も同じ。特に広末は浮いて感じてしまう。
しかしそれは、妻にも他の人物と同じ様に
分かりやすく納棺師という仕事を嫌わせ、
大悟の仕事を知った時のセリフにも、
違和感を感じたのも大きいかもしれない。
笹野高史は、かなり美味しい役を、美味しく演じていたけどね。
人は誰もがいつかは“おくりびと”であり、“おくられびと”になる。
そんな事は分かっていても、目の前になければ、
普段は全く考えないこと、考えたくないこと。
実際に棺に入った遺体を目の前にしたことはあっても、
入れる前に作品中で行われるような納棺の所作を観たことはなかった。
司法解剖後の棺に入った親族の遺体に、
何とも言えない思いをした事のある自分としては、
そのような遺体の場合はどのようにするのかは分からないが、
納棺師がいてくれたら、
やり場のない想いを少しは和らげてくれたかもしれないと思う。
描きにくいと思われる作品で、
主人公の大悟と佐々木のコミカルな師弟関係は面白く、
緩急としての笑わせる部分は、ほどほどに心地よく上質だと思うし、
色々な納棺の場面が出てくるが、納棺の所作の美しさは、
作品中の遺族同様に、こちらも見惚れてしまうほどでもあり、温かかった。
僕の目には新鮮に見えたが、
綺麗事だけではないであろう納棺師という仕事を知れて、
誰もが訪れる旅立ちを、多くの人が携わっていると、
改めて勉強にもなった。
多くの方が、それぞれの、おくられた人々を想い涙できるでしょう。
そんな作品だからこそ、激しい部分は、
もっと激しくてもよかったかと思うし、
たった2ヶ月であそこまで出来るか、と思わないでもないし、
チェロが巧く絡んでいたかも疑問がないわけではない。
石文のエピソードは、ええ話や、温かいのう、と思っても、
ラストの奇跡のようなことはないだろうと、思わないでもない。
分かりやすいバロメーターとして、寝不足で行って、ちょい、ちょい、
一瞬意識がない部分があったのは、
僕の中では傑作というほどではないという事でしょうか。
自分の中で傑作だという作品は、
寝不足でも寝るような事はないですからね。
でも、多くの人に観てほしい作品です。
愛情とユーモアに満ちた、「送る人」を描く名作
納棺師(のうかんし)。
ちょっと辛気臭くて、敬遠されそうな職業のように感じられてしまいます。
しかし、親族の目の前で行なわれる納棺の儀式は、静謐で、厳かで、死者に対する敬意に満ちていました。
故人の肌を遺族に一切見せないように、遺体を清拭し、寝間着から白装束に着替えさせる一連の手技は、一糸乱れぬ職人技です。
生きていたときのように死に化粧を施す指先は、何よりも亡き人への愛情が溢れてます。
遺族にも一人一人清拭をしてもらいます。
それが旅立つ人と残される人の、最後の心の交流になるでしょう。
悲喜こもごものエピソードを、映画はユーモラスに描いていきます。
日常から死が遠ざかっている現代人は、死を忌避してしまいがちです。
しかし、人は誰でも必ず死ぬ、死ぬことは普通のことなのです。
誰でもが「おくりびと」になるし、「おくられびと」にもなる。
納棺師は悲しい別れを、優しい愛情で満たす仕事なのです。
監督は滝田洋二郎。
「名作」と呼ぶのに相応しい、ユーモアと感動に溢れた日本映画が、新たに誕生しました。
傑作!今年の日本を代表する作品ではないかと思います
16日「新宿ピカデリーOPEN」こけら落とし試写会。本木がいい演技をしています。彼はトーク番組では変人ぶりを露呈しますが、やはり演技は上手い。広末や山崎努も脇を固め、2時間を超える作品でありながら、あっという間に時間を感じます。脚本に無駄が無く、洗練されたストーリー展開に客は満足するのではないでしょうか。納棺師という職業は、誰もが身近にありながら、実際にはよく知られていないのではないかと思います。「仕事」としては結婚式を上に見て、葬式を下に見る風習がありがちですが、その職業に生きる彼らの誇りと思いを感じ取れる、素晴らしい日本映画であり、多くの方にに見てもらいたい作品です。 P.S.新宿ピカデリーはいい映画館です。今後は利用したいと思います・・・。
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