「日本らしい、川の流れのような映画」おくりびと antさんの映画レビュー(感想・評価)
日本らしい、川の流れのような映画
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映画を観る前は遺体に化粧をして遺体を棺に納める納棺師の話と聞いて、暗い話を連想したが暗いというよりは淡々としていていい意味で日本映画らしい優れた映画。予想以上に笑えるシーンが多く、悲しみと笑いは表裏一体なのだと再確認。本木雅弘演じる主人公は音楽をやめたばかりの元チェリスト(音楽担当の久石譲の趣味も入っている?)、楽器を扱うように丁寧に遺体に対する姿が美しい。中盤まではお仕事映画としても楽しめる。
会社の社長は山崎努(「クライマーズハイ」より良い)、彼が出ていることで往年の伊丹十三映画を思い出したりもする。彼は食べ物に対する執着が強い。考えてみれば食というものは死と向き合わなければできない行為で、この映画ではそうした死と生の対比がうまく描かれている。
最後にはやや湿っぽくなるが、納棺師という仕事なので最後は身近な人を送らなければならないのは容易に想像がつく。広末涼子は適役だとは思わないが、この映画から浮いているほどではない(ただ、ともだちのような夫婦なので、仕事のことを打ち明けていないのはややご都合主義)。余貴美子はまさに適役。笹野高史はそう来たかという感じでひねりあり。
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