「ボンド、ピアース・ボンド」007 ゴールデンアイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ボンド、ピアース・ボンド
シリーズ17作目。1995年の作品。
6年の休止を経て、スパイ任務再開!
旧製作陣が死去や退陣し、新製作陣による新体制。その他スタッフやキャストも多くが一新。
まさしく、再スタート。
ティモシー・ボンドのような現代的な要素を残しつつ、作風はかつてのショーン・ボンドやロジャー・ボンドのような面白さやゴージャス感を取り戻し、作品は大ヒット。再びドル箱シリーズに。
その要因は多々あるが、最大の功績者は無論、この人。
5代目ボンド、ピアース・ブロスナン登場!
ボンドは世代によって推しがあるが、私にとってミスター・ボンドは、ピアース・ブロスナンである。
劇場で初めて見たシリーズは次作だが、本作もリアルタイム・ボンド。
それに、超ハマり役なんだもの!
ピアース・ボンドは歴代の魅力全て兼ね備えていると言われる。
ショーン・ボンドのようなセクシーさ、ジョージ・ボンドのような哀しみの一面、ロジャー・ボンドのようなユーモアさ、ティモシー・ボンドのようなシリアスさ。そこに、カッコ良さ、スマートさ、ナチュラルさ。
もう、完璧と言っていい。
4代目の時、ティモシー・ダルトンより先に決まりかけていたというのは有名な話。
Q役のデズモンド・リューエンは、「ショーン・コネリー以来最高のボンド」。
トム・クルーズのイーサン・ハントのモデルは、このピアース・ボンド。
ファンだけではなく、業界内にも影響を与え、魅了した。
ピアース・ボンドが一番のお気に入りという人は、思ってる以上に遥かに多いだろう。
さて、ストーリーは…
ソ連崩壊前、ソ連の化学工場で任務に就いていたボンド。任務は達成するも、盟友であった006=アレックが犠牲になってしまう…。
9年後、国際犯罪組織“ヤヌス”を探る任に当たっていたボンド。ヤヌスは最新鋭戦闘ヘリを奪取し、北極圏のロシア宇宙兵器管理基地を襲撃。あらゆる電子機器や防衛システムを無力化させる事が出来るディスク“ゴールデンアイ”を奪い去る。
ボンドは唯一の生存者の女性プログラマー、ナターリアの力を借りてゴールデンアイの行方を追うが、彼の前に現れた黒幕は、衝撃の人物であった…。
落下するヘリにバイクでダイブして乗り込み、間一髪脱出。プレ・シークエンスからいきなり圧巻のアクションを見せ、ボンド復活を謳い上げたと言っていい。
中盤はボンドが街中を戦車で追跡するビックリチェイス。迫力とユーモアのアクションの見せ場の一つだが、ボンドさん、目立ち過ぎです…。
アクションもCGも進歩。初登板のマーティン・キャンベル監督がダイナミックに。
クライマックスは敵基地のパラボラアンテナ上で。
攻撃目標を定めた衛星を止めなくてはならない。
迫るカウントダウンもスリリングだが、それ以上に、立ちはだかる思わぬ敵…。
黒幕は、死んだ筈のアレック。
同じ00エージェントなので英国人かと思いきや、そうではなかった。
祖国や両親を裏切り苦しめた英国や世界へ復讐。
友の為に私的な感情で復讐に燃えたボンドが、今度はかつての友と闘わなければならない。
シリーズで初めて00エージェントが敵に。
敵役に定評あるショーン・ビーンがさすがの巧演。
ボンドガールは、イザベラ・スコルプコ。
九死に一生に遭いながらも、ボンドに同行。プログラマーの腕を活かしてボンドをサポート。それに、仄かな色気漂う魅力的な美人さん。
まだホグワーツの森の番人になる前の“ハグリット”や「俺は英雄だ!」のアラン・カミングら周りも個性的。
だけど本作は、時代なのか女性キャラが一際印象に残る。
マネーペニーが3代目なら、Mも3代目。しかも、初の女性M。演じるは、言わずと知れた名女優ジュディ・デンチ。
元々シリーズの大ファンだったそうで、二つ返事で引き受けたとか。その就任もミーハー感じではなく、さすが後のオスカー女優、ディムの称号。歴代で随一と言っていいくらいの存在感。某英国首相のような鉄の女でありながら、ボンドを信頼。尚自分にとって、このお方の数々の名演や役の中でも、やはりM役がお気に入り。
そしてこの『ゴールデンアイ』を語る上で忘れちゃいけないのが、女が上…いえいえ、オナトップ! 殺人に快楽を感じ、SEX中に狂喜しながら相手を絞め殺す!
演じたファムケ・ヤンセンの美貌とセクシーさと役柄のクレイジーさが見事にマッチ。強烈な印象を残した。
イイ女…いや、イカレ女? やはりイイ女…いやいや、やっぱりイカレ女?
劇中でMに皮肉たっぷりに言われたように、女性軽視の太古の恐竜の冷戦時代の遺物。
しかし、新しい時代。
ボンドもたじたじになるようなオナトップ(=女が上)。
SFチックな悪の組織でもなく、冷戦時代も終わり、コンピューター時代。
そんな時の流れでもボンドが尽くすのは、祖国と女王陛下の為、任務の為、そして自分の為。
変わらぬ魅力と全く新しい魅力を重ね合わせて、007の新時代と新しい任務が始まった!