「楽しませる優しさと、人を笑わせられる無邪気な子供心。そして、人を感動させてくれる繊細さが一杯詰まっています。」パコと魔法の絵本 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
楽しませる優しさと、人を笑わせられる無邪気な子供心。そして、人を感動させてくれる繊細さが一杯詰まっています。
小地蔵は、これまで中島監督作品を敬遠していました。なんといってもど派手でベタな演出手法を拒絶してからです。本作も原作の舞台さながら、ナンセンスな台詞とベタで濃いキャラの出演者ばかりで、冒頭は、ため息つきながら見ていたのです。
ところが孤独で自己中な老人大貫と1日で記憶を失ってしまう少女パコのピュアなこころのやり取りにを見ていくうちに、すっかりはまってしまいました。そして不覚にも思わず涙ぐんでしまったのです。
本作には、中島監督の人を楽しませる優しさと、人を笑わせられる無邪気な子供心。そして、人を感動させてくれる繊細さが一杯詰まっています。
出演者が語るガマ王子の絵本の物語を3D映像でも表現しているので、小さな子供も大喜びして観れるでしょう。主演級の超豪華キャストをCGキャラクターに変換させて、元の本人と合成し共演させているのですからすごいことです。しかも、どのキャストも誰が誰だかわからない奇想天外なメーキャップと衣装なんです。後でサイトのキャスト一覧を見て、仰天!みなさん何か学芸会をしているかのような童心に帰った演技でした。
ただ本作は、結構大人が考えさせられる映画だと思います。
それは絵本の内容と大貫の心の変わりように象徴的に描かれていました。
一代で成り上がった大貫は、誰にもこころを開かずに、わがまま放題に生きてきました。誰かに自分を名指しされるだけで、「おまえが自分を知っているだけで腹が立つ」と罵る始末。そんなクソシジイが、純金のライターを取られた腹いせにパコを殴ってしまいます。けれども、記憶を1日でなくすパコには、翌日殴られたことも忘れて、大貫に親しく声をかけてきます。怪訝に思ったなった大貫は、院長からパコが事故に遭って、両親と記憶を共になくしたことを知ります。このときの大貫が大泣きするところが忘れられません。院長にこう聞くのです。「俺は泣いている。生まれて初めてなので止め方を知らない。院長涙はどうやったら止められるのだ。」と。院長の答えは、「思い切り泣いたら止まる」というものでした。
大貫は自分の孤独さに蓋をしていたのでしょう。現実を受け入れることが怖かったのでしょう。それがパコという自分の存在を1日で忘れられてしまう人に出会ってしまったことで、思い知らされたのです。
「この子の心の中にいたい」と。
大貫は、パコに何か自分にできることがあったら、してあげたいとと本気で思うようになります。それは、1日しか記憶が残らないパコに、それでも何か思い出に残ることをしようと。そして毎日毎日パコの好きなガマ王子の絵本をパコに読んで聞かせてあげたのです。
まるで大貫そのもののガマ王子がみんなのために戦いに立ち上がるお話は、読んでいる大貫にとって自らの贖罪にぴったりな内容だったのです。
小地蔵は、大貫の変わりようを見て、自分の人生を省みることの可能性を感じました。どんな頑固者で自己中でも、悔い改めることができるのですねと。
他にも素敵なところはたっぷりありましたが、長くなったので画面で見てください。画面も芝居も極彩色にして濃厚なのに極めて淡いピュアな気持ちに浸れることでしょう。
最後に、パコを演じたアヤカちゃんのコメントが面白いので紹介します。
いつも「ダメ! ダメ! ダメ!」と、スタッフや役者さん達をどなっていたので中島監督のことを「クソじじぃ!だなぁ~」と思ったりもしましたが、出来上がった映画をみたらとってもすばらしくて クソじじぃ!だなんて思ってごめんなさいという気持ちになりました。
なるほど、だから中島監督には 監督の上に“天才”って言葉がつくのだなぁ~って思いました。
アヤカちゃんにとって中島監督は、大貫のような存在だったのですね。