劇場公開日 2008年7月19日

崖の上のポニョ : 特集

2008年7月14日更新

宮崎駿監督最新作「崖の上のポニョ」がまもなく公開される。公開直前の7月7日、本作の完成報告会見が行われ、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが登壇。宮崎駿とは30年近くビジネスパートナーとして歩み、あまり表舞台に立たない宮崎監督の代弁者とも言える鈴木プロデューサーが、「ポニョ」や宮崎駿について多くを語った。その興味深い発言から、「ポニョ」を読み解くキーワードを探ってみた。(文・構成:編集部)

プロデューサー発言に見る、「ポニョ」を読み解く4大キーワード

人間になりたいさかなの子・ポニョ
人間になりたいさかなの子・ポニョ

■子供のための映画

人間になりたいと願うさかなの子・ポニョと5歳の人間の男の子・宗介を主人公とした宮崎版「人魚姫」ともいえる本作を、宮崎監督は「子供のための映画」としている。登場人物も舞台も非常にミニマムで、パステル調で描かれた背景の中を子供たちが駆け回る様子は、おとぎ話を絵本で読んでいるような感覚だ。「子供向け」ということについて鈴木プロディーサーは次のように発言している。(※以下、全ての発言は鈴木プロデューサーのもの)

絵本のような優しい背景画は見どころ
絵本のような優しい背景画は見どころ

「常々、宮崎駿はこんな言い方をします。『子供に絶望を語るな。希望を語れ』と。そういう意味では、『ハウルの動く城』は、大人に寄り過ぎたという反省がありました。『ハウル』は、宮さん(宮崎監督)自身が思っていることが色濃く出た作品なので、そういう意味では面白く見られましたが、作品としてのバランスを欠きました。次にやるとしたらその真逆――子供に対してきちっとしたものを見せる。そういう順番かなと思ったのです」

ポニョと宗介の5歳という年齢設定は、これまでの主要な宮崎作品の主人公でも最も低い部類に入るが(「となりのトトロ」のメイは4歳)、監督が想定した“子供”たちの年齢がこのあたりなのであろう。

■母と子

本作は「母と子」の物語でもあるが、宗介とその母リサの母子関係はちょっと特殊で、宗介はリサを呼び捨てにしているが……。

「“母ちゃん”“お母さん”“ママ”など母親の呼び方はさまざまありますが、今後はどういう呼び方が定番になっていくのか……まさに混迷の時代です。リサという女性は、相手が5歳であっても一個の人格と認めていますが、多分(宮崎監督は)それをやりたかったんだと思います。そのためにリサはきっぱりとした女性として描かれています」

主人公・宗介は監督自身?
主人公・宗介は監督自身?

また、これまでの宮崎作品の主人公は“母親不在”だったことを考えると、母子関係を描いたということは大きな変化。さらに、作中に登場するトキというおばあさんが、監督にとって重要な位置づけにある。

「宮さんのお袋さんは71歳で亡くなられていますが、今年1月に67歳になった宮さんが昨秋、『いつお迎えが来てもおかしくない年になった。(自分が死んで)お袋と再会したら、何を話そう』と言っていました。トキさんというキャラクターは宮さんの母親がモデルだと公言していましたが、その胸に飛び込んでいく宗介は宮崎駿そのものかなと」

これまで少女が多かった主人公が、本作で男の子になったのは、監督自身の分身であり、母子関係を映画に取り込んだことも、監督の意識の変化から来ているようだ。

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