劇場公開日 2008年3月1日

「ただのプロレス映画だと思っていたら・・・やんごとなき青春映画だった。」ガチ☆ボーイ kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ただのプロレス映画だと思っていたら・・・やんごとなき青春映画だった。

2019年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

 一晩眠ると以前の記憶を失くしてしまう大学生五十嵐(佐藤隆太)。これだけの設定を見ると、記憶障害を扱った映画『50回目のファーストキス』と似ている。朝起きると、天井や壁には「日記を見ろ」という自筆の文字が何枚も貼ってあり、“明日の僕へ”と書かれた数冊のノートに目を通す。毎朝同じことの繰り返し・・・

 根本的に『50回目~』と違う点は、自ら日記や写真を整理し、自分の過去の行動を理解し役立てようとしている性格だ。高次脳機能障害の原因となる事故以前の記憶は忘れることもなく、新しく記憶ができないだけ。したがって、事故直前に感動したこと、恋心を持った人を追い求めて行動するのだ。普通の社会人として働くことができないことも理解しているし、そのため家族にも一生迷惑をかけ続けることになることも承知している(これも毎朝確認)。だからこそ、学生時代に思い切って好きなことを・・・

 五十嵐の熱き想いは理屈抜きで伝わってくるのです。一日しか記憶できない、だから毎日が一生懸命、アザが、筋肉痛が、カラダだって記憶する。毎日が彼にとっての一生の出来事。ガチンコではない学生プロレスであっても、生きる証しのためにガチンコとなってしまうのだ。しかも弱々しいレスラーのマリリン仮面。観客だってそんなひたむきさに夢中になってしまうのです。

 プロレス研究会“HWA”の他の部員も個性的で飽きさせない。序盤の展開はすべっていたので心配したけど、さすがはウケを狙うのが主目的である学生プロレスだから、彼らのお笑い精神がそのうち自然に思えてくる。できればもう少し笑いたかったのですが、記憶障害の視覚効果の物足りなさと同様、作り手もガチンコで臨んでいたことが若々しさを感じさせてくれているので逆に良かったのかもしれません。

 HWAの中では安全第一主義のレッドタイフーン奥寺(向井理)やHWAを去ったドロップキック佐田(川岡大次郎)が印象に残るし、五十嵐の妹(仲里依紗)がとても良かった。時折、向井理が瑛太に見えて、仲里依紗が上野樹里に見えてしまったのですが、そんなことを考えているうちに部室がSF研究会に見えてくる・・・

kossy