最高の人生の見つけ方(2007) : 映画評論・批評
2008年4月30日更新
2008年5月10日より丸の内ピカデリー2ほかにてロードショー
70歳の名優2人がおとぎ話から真実味を引き出す
素直に笑って泣ける映画。全てが落ち着くところに落ち着いて、いい感じでゆるりと気持が解けた。人生の最終段階で、それまでに出来なかった遊びを思う存分やりつくし、腹を割って話せる友を得るなんて羨ましい限りだ。そんなうまい話は映画の中だけ。現実にはありっこないなんてひねくれた気持にならないのは、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが、まるで自分自身を演じているように、役柄にぴったりはまっているからだ。
フィクションであることも、彼らの演技であることも承知の上で、自動車整備工カーターの誠実さはフリーマン自身の特質と思えるし、わがままいっぱいなのにどこか可愛くて憎めない実業家エドワードは、ニコルソンそのままに見えてしまう。とにかく、ニコルソンを見ているだけで大満足。やりたい放題の演技でこんなにも見る者を魅了する秘密は何なのか、聞いてみたい。この俳優たちのリアリティーこそが、おとぎ話のような老人の冒険譚から真実味のある感情と共感を引き出しているのだ。70歳の俳優2人が主役で、癌で死んでいく話なのに、みんながニコニコする明るい映画を作れるのは、ハリウッド伝統の技かもしれない。このところ低迷していたロブ・ライナーが名優たちのお陰でかつての精彩を取り戻したのも喜ばしい。
(森山京子)