「セラヴィ」潜水服は蝶の夢を見る とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
セラヴィ
オッサンだった。
身動きの取れない中で、彼が夢想すること、彼の視線…。内なる声の数々…。
しかも、献身的な元妻にさせる伝言…。
そんなオッサンにとっても、
彼にとって”神”は救いにはならなかったけれど、父とのやり取り。涙がにじんでしまった。
難病物の感動大作…の、くくりに入るのだろうが、何かが違う。
『ELLE』の編集長と聞いて、どれだけ詩的なイマジネーションが広がるのだろうかと思っていたが、意外に現実的。『ミルコのひかり』の方がよっぽど、詩的で映像もクリア。
なんて、思いながら見ていたけれど、エンディングでウェイツ氏の歌にのせて、氷山が崩れ落ちる様の逆再生を見ているうちに、涙があふれかえってきた。
一人の男の人生。死ぬまで続く人生。思い通りになること、ならぬこと。自分のミスで逃すチャンス。思いもよらぬ贈り物。聖人君子でもなく、最後まで”自分”であった人生。どれだけの想いを残して死ぬのか。やり直したいけれど、やり直せない人生。それが人生。
演出・カメラワークが秀逸。
1度目の鑑賞では筋を追うことに焦点が割かれるが、
2度目以降の鑑賞では、この表現をこう表現するかというところにうならさせられる。
きわめて現実的なエピソードをベースに、挟み込まれる主人公の記憶・イマジネーション。鑑賞するたびに意味付けが変わりそうだ。
そして、みんなも絶賛しているけれど、マチュー氏が凄い。
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