劇場公開日 2008年2月9日

「セラヴィ」潜水服は蝶の夢を見る とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5セラヴィ

2018年6月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

オッサンだった。
 身動きの取れない中で、彼が夢想すること、彼の視線…。内なる声の数々…。
 しかも、献身的な元妻にさせる伝言…。

 そんなオッサンにとっても、
彼にとって”神”は救いにはならなかったけれど、父とのやり取り。涙がにじんでしまった。

難病物の感動大作…の、くくりに入るのだろうが、何かが違う。

『ELLE』の編集長と聞いて、どれだけ詩的なイマジネーションが広がるのだろうかと思っていたが、意外に現実的。『ミルコのひかり』の方がよっぽど、詩的で映像もクリア。

なんて、思いながら見ていたけれど、エンディングでウェイツ氏の歌にのせて、氷山が崩れ落ちる様の逆再生を見ているうちに、涙があふれかえってきた。

一人の男の人生。死ぬまで続く人生。思い通りになること、ならぬこと。自分のミスで逃すチャンス。思いもよらぬ贈り物。聖人君子でもなく、最後まで”自分”であった人生。どれだけの想いを残して死ぬのか。やり直したいけれど、やり直せない人生。それが人生。

演出・カメラワークが秀逸。
1度目の鑑賞では筋を追うことに焦点が割かれるが、
2度目以降の鑑賞では、この表現をこう表現するかというところにうならさせられる。
 きわめて現実的なエピソードをベースに、挟み込まれる主人公の記憶・イマジネーション。鑑賞するたびに意味付けが変わりそうだ。

そして、みんなも絶賛しているけれど、マチュー氏が凄い。

とみいじょん