全然大丈夫 : 映画評論・批評
2008年1月29日更新
2008年1月26日よりシネクイントにてロードショー
なんだか笑えて、清々しい気分になる青春ラブコメ
植木職人見習い照男と清掃会社勤務の久信は幼馴染み。中学生のころからあまり変化のない生活を送ってきたと思われる下町の青年2人が対人恐怖症気味のあかりに恋をした!?
まず、キャラクター設定がユニークだ。主人公(一応)の照男は、「世界一怖いお化け屋敷作り」が夢で友人とともにホラー映画を自主製作中。他人にダメ出しするが、実は自分が一番のダメダメ君。久信は超がつくお人良しで、「NO」が言えない自分のふがいなさにも気づいている。美女あかりはチクワと雨音を熱愛し、なぜかホームレス老女の絵を描き続けている不思議ちゃん。彼らを人生再発見の旅に出る古本屋の主や微妙に意地悪なOL、仏像修復師が取り巻く。このクセの強いキャラの微妙な心模様を役者陣が各々の個性を出しながら、等身大の人間として演じた点も素晴しい。思いを伝えられないもどかしさや軽い嫉妬、困惑といったキャラの心情に共感を覚えもするはず。荒川良々&岡田義徳は初共演だが、絶妙のコンビネーションを披露している。
また、藤田監督の巧みな演出も見逃せない。奇天烈キャラを抜け感のあるユーモアで動かし、絵空事ではなく、リアルな青春ラブコメに仕立てている。笑いのツボは人それぞれだが、監督のそれはアメリカン・ジョークにも通じるので、日本のお笑いに慣れた目には新鮮なはず。ゆる〜いギャグのような展開をモラトリアム青年の成長に帰結させた手腕とビジョンに清々しい気分にさせられた。
(山縣みどり)