「ドキュメンタリータッチ映画の極み」クローバーフィールド HAKAISHA Natsukiさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリータッチ映画の極み
オープニングからエンディングまで
明らかに9.11の恐怖を再現した映像の連続だ
《9.11 ~N.Y.同時多発テロの衝撃の真実~》
というドキュメンタリーのDVDがある
これはNYの消防署を数ヶ月間密着取材していた取材班が偶然に同時多発テロに巻き込まれ
ワールドトレードセンターへ消防隊と共に入った世界で唯一の壮絶な映像の記録であると同時に
ワールドトレードセンターへ《1機目が激突した瞬間》を撮影した世界で唯一の映像でもある
《クローバーフィールド》はこのドキュメンタリーと同等の恐ろしさがある
主人公達が撮影し続けるハンディカムの映像のみでしか
《事の真相》の判断がつかない点・・・
NY市民の混乱や動揺や泣き叫ぶ姿・・・
凄惨な現場や瓦礫の山・・・
チリや埃や紙類が舞い散る街を避難する行列・・・
その光景を携帯のカメラで撮影する人・・・
究極のリアルさの中に放り込まれる
そしてJJエイブラムスがまたしてもエイリアスやLOST同様に
《大胆な構成と映像》でエンターテイメントに対する視聴者の固定概念を見事に打ち砕いてくれる
その中でも非常に映画的な構成の巧みさを感じる点は・・・
一般市民がNYで体験する大惨事の光景を撮影したという この作品自体のフィルムが 彼女とデートをした時に撮影したテープの上に上書きされた映像という設定
そのために恐怖の映像の合間合間に楽しいデート風景が数秒映る時が何度かある この《日常と非日常のギャップ》が実に効果的だ
《幸せな思い出に恐怖が上書きされていく》皮肉な構成と 最後の最後に映る過去の映像の《彼女の一言》がブラックでかなりスパイスが効いている
全編揺れに揺れる手持ちカメラの映像なために劇場公開時は車酔いに似た症状の観客が続出したが
この恐怖の中で《酔ってる暇など全くない》