「怪獣映画で、「人間目線」が当たり前になった今」クローバーフィールド HAKAISHA 悶さんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣映画で、「人間目線」が当たり前になった今
【鑑賞のきっかけ】
J・J エイブラムスの代表作でもある本作品は、以前にも鑑賞したことがありましたが、動画配信にラインナップされているのを発見して、懐かしくなり、再鑑賞してみました、
【率直な感想】
<「人間目線」による描写は、以後の巨大モンスターものの予兆か?>
本作品は、一般市民が未知の巨大モンスターをビデオカメラで撮影したものの一部始終が本編として流されていく。
このドキュメンタリー的な手法は、もし、巨大生物が都市を襲ったら、そこに遭遇した人はどんな光景を目の当たりにするだろう?という点で、リアリティを感じさせ、当時の大ヒットにつながったのでしょう。
今回、本作品を鑑賞するにあたり、制作年が2008年と確認して、思い当たったことがあります。
巨大モンスターものと言えば、「ゴジラ」だと思いますが、昭和から東宝が制作し続けてきた「ゴジラシリーズ」は、本作品の制作の少し前、2004年に「ゴジラFINAL WARS」という作品で、継続的な制作に終止符が打たれているのです。
つまり、本作品の制作時には、「ゴジラ」の新作は作られていなかった。
その後、2014年の「GODZZILLA ゴジラ」(ギャレス・エドワーズ監督)、2016年の「シン・ゴジラ」(庵野秀明総監督)で「ゴジラ」は復活していきました。
2004年以前の「ゴジラ」と2014年以降の「ゴジラ」には、その撮影手法に大きな違いがあります。
つまり、2004年以前は、「人間目線」でゴジラを捉えるというシーンは限定的でした。それに対し、2014年以降は、「人間目線」でゴジラを捉えるシーンが多用されています。
ゴジラの巨大さを表現するなら、やはり「人間目線」が効果的です。
だから、初代「ゴジラ」(1954年)もゴジラの初登場シーンは、人間目線でゴジラを捉えています。
でも、当時は、合成の技術が未発達であり、長らく、怪獣パートと人間パートは別々に撮影され、別々に描写される時代が続いてきました。
でも、今は技術の向上の結果、「人間目線」での描写が多用されています。
最近話題になった「ゴジラ-1.0」では、人間目線の描写が多いです。
実は、ゴジラの体長は、90年代の作品では100メートルくらい。これに対し、「ゴジラ-1.0」は、50メートルくらいですが、人間目線描写のお陰で、半分の体長になったと感じた観客はほとんどいなかったのではないでしょうか。
この「人間目線」という点に着目したとき、本作品は、その後の巨大モンスター映画を予兆していたようにも感じられるのです。
<最後のシーンは、意味深>
本作品を改めて鑑賞して、印象深かったのが、最後の1分くらいのシーンです。
着目点の1つ目は、背景に映る「動く物体」。
着目点の2つ目は、登場人物の最後の一言。
この2点が、本作品の本編のラストを、きりりと引き締めてくれていると感じました。
【全体評価】
「人間目線」で見た巨大モンスター。
現在制作されている諸作品は、プロが撮影したもの。
でも、現実に、一般の人が撮影するとやはりこんな感じ。
と、改めてリアリティを感じてしまう、秀作でした。